久保建英が「逆転はほとんど無理」な状況から放った一撃の大きな価値。王者アトレティコ撃破でマジョルカは上げ潮に
アトレティコ・マドリードのディエゴ・シメオネ監督の進退までが云々されるほどの一撃だった。
12月4日、マジョルカの久保建英(20歳)は、後半28分からの途中出場だったにもかかわらず、リーガ・エスパニョーラ王者アトレティコ・マドリードの息の根を止める逆転弾を決めている。アウェーで堅守を誇るアトレティコを逆転で下す。その意味は絶大だ。
結局、カリスマ性の強いシメオネは続投が決まったが、それほど世間を騒がすゴールだった。
「(終盤の交代出場で)アトレティコを相手に1-0から逆転するのはほとんど無理で。でも、自分たちは最後まで信じて戦っていました。運にも少し恵まれて、うまくいって、チームはどうだったか知りませんが、僕は自分が勝利の得点を決めると思ってプレーしていました」
試合後、久保は語っている。その胆力から解き放つ技術は、リーガの猛者たちと比べても、何ら遜色はない。
後半アディショナルタイムだった。
1-1と同点に追いついたことで、マジョルカは守りに入っていたが、久保は逆転の意志を捨てていなかったのだろう。敵FKをクリアしたボールを味方が頭でつなげると、久保はセンターラインぎりぎりのところで裏へのボールを必死のジェスチャーで要求。パスを呼び込むと、追走を許さず、GKヤン・オブラクと1対1になった。名GKだけに完璧な寄せに見えたが、久保はファーに打つモーションを仕掛け、右足を出させると、左足で空いた股を抜いた。
アトレティコ・マドリード戦で今季初ゴールとなる決勝点を決めた久保建英(マジョルカ)この記事に関連する写真を見る「マジでビビっちゃってさ。もうひとり、センターバックがいると思ったから」
試合後、ロッカールーム近くの通路で、久保が韓国代表イ・ガンインとスペイン語で会話する光景がカメラで撮影されていた。気の合ったチームメイト同士がゴールシーンを振り返る。劇的な逆転勝利の後だっただけに、口調は興奮気味だった。
「Me he cagado」
直訳すると、「くそを垂れる」という意味から転じ、「くそを漏らすほどにビビった」となる、近しい者同士で使うスラングだ。
1 / 3