シャビ新監督は何をやろうとしているか。「これぞバルサだ」実現へ正統後継者による原点回帰の戦術とは (4ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 おそらくデ・ヨングよりガビのほうに、より適性があると判断したのではないかと思う。エスパニョール戦のデ・ヨングもそう悪くないように見えたが、シャビには違うものが見えていたのだろう。これからも修正は続くはずだ。一子相伝の眼によって。

 最初の2試合、バルサはバルサ・スタイルを模倣しようとしているチームのようだった。

 ビルドアップは何度か引っかかり、中間ポジションへパスを入れての崩しも威力抜群とは言えず、確かにパスワークはいいけれどもバルサ化を図ってこれで失敗するチームはほぼないのだ。そして2試合とも後半にガス欠を起こしていた。

 しかし、まだ2試合にすぎない。リオネル・メッシがいた時から、バルサは少しずつバルサではなくなっていて、メッシが去ったあとはもはやバルサではなかった。

 再建は始まったばかりなのだ。ウスマン・デンベレとアンス・ファティの両ウイングが揃って、ようやく戦力が整うのではないだろうか。中間ポジションの効用の1つはサイドで1対1にすることで、そこで絶対的な能力を持つ選手はバルサ・スタイルでは不可欠でもある。

 ベンフィカ戦に先発したデミルは18歳、名手フランの息子であるニコが19歳、スペイン代表入りしたガビは17歳。そしてペドリもいる。これら若い才能たちから、やがてシャビの跡を継ぐ者が出るのかもしれない。バルサがバルサである価値を微塵も疑わない後継者が。

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