シャビ新監督は何をやろうとしているか。「これぞバルサだ」実現へ正統後継者による原点回帰の戦術とは
欧州サッカー最新戦術事情
第1回:バルセロナ
日々進化していく現代サッカーの戦術を、ヨーロッパの強豪チームの戦いを基に見ていく連載。第1回は、シャビ・エルナンデス新監督が就任し、立て直しを図っていくバルセロナを紹介する。
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シャビ新監督(写真右)が就任したバルセロナ。原点回帰のスタイルで苦境のチームを立て直せるかこの記事に関連する写真を見る<バルサ・スタイルの正統後継者>
シャビ・エルナンデスがバルセロナの監督に就任した。いつかこの日が来るのは誰もが知っていたが、チームがどん底とも言える下降線をたどっている時期に救世主として迎えたのは、やや予想外の展開だったかもしれない。
よく知られているように、バルセロナのサッカーはプレースタイルが確立されている。始まりは1988年に就任したヨハン・クライフ監督から。それ以前にもリヌス・ミケルス監督などがすでに種をまいていたとはいえ、現在のバルサにつながるデッサンを描いたのはクライフだ。
20年後の2008年、クライフ監督下で中心選手だったジョゼップ・グアルディオラが監督になっている。"ペップ"のチームが披露したサッカーは「これぞバルサだ」とサポーターを喜ばせ、あらゆるタイトルを獲りまくって黄金時代を築いた。
ただ、実はそんなバルサを以前に見た人は誰もいない。ペップのチームが実現したのは、クライフが描いていた構想であって、ドリームチームはそれを実現していないからだ。ペップは自身を「ラファエロの弟子」に喩えている。原画を描いたのはラファエロ(クライフ)であって、自分(グアルディオラ)はそれに彩色して完成させた工房の弟子にすぎないという意味である。
ただ、その仕事は誰にでもできるものではない。
クライフ以降、すべての監督がクライフの精神と戦術を受け継ぎ、発展させようとしてきたが、完璧にやり遂げたのはグアルディオラだけなのだ。同じことをしているはずなのに、同じにならない。ルイス・ファン・ハールもフランク・ライカールトも似て非なるものを作り上げている。正統後継者はグアルディオラだけだった。
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