スペイン代表を若手5人が変える。カタールW杯までの成長期待率ナンバー1

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

強豪国のカタールW杯(4)~スペイン

 2008年ユーロ、2010年南アフリカW杯、そして2012年ユーロで優勝。メジャーな国際大会で3連覇を果たしたサッカー史上初の代表チームとなったスペインは、まさに無敵艦隊だった。彼らの目指したポセッションサッカーは一世を風靡した。

 しかしその後、スペインは急速に衰えていく。2014年ブラジルW杯はまさかのグループステージ敗退。2016年ユーロ、2018年ロシアW杯はともにベスト16止まりだった。

 監督も、黄金期の8年間を率いたビセンテ・デル・ボスケが去ってからは、次々と代わっていった。ロシアW杯の開幕直前にはフレン・ロペテギが解任されるなど前代未聞の事件も起き、チームはなかなか落ち着きを得ることができなかった。

 2018年、バルセロナで手腕を見せたルイス・エンリケがベンチに就いた時には、やっと安定するかと思われた。現代的で勇気があり、今年51歳になった経験も豊かな監督である。しかし2019年、彼は「家族の事情」で辞任する。後にわかったことだが、彼の愛娘が重い病にかかっており、その後、亡くなった。

 同年11月、ルイス・エンリケは代表チームに戻ったが、最初はあまり芳しい結果を出せなかった。ラ・ロハ(スペイン代表のニックネーム)は長い間の混乱状態で、自分たちらしいサッカーを失っていた。だが、ルイス・エンリケ自身が悲しい事件のショックから立ち直っていくのと呼応するかのように、チームも次第に自信を取り戻していく。

 今年夏のユーロ2020では、準決勝で優勝国のイタリアにPK戦の末敗れたものの、ベスト4にまで勝ち上がり、ネーションズリーグでは準優勝を果たした。カタールW杯行きの切符もプレーオフに回ることなく手に入れることができた。

スペイン代表デビュー最年少記録を更新したガビ photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAスペイン代表デビュー最年少記録を更新したガビ photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る ただし、かつての無敵艦隊に戻ったのかといえば、そうではない。たとえば、すでにカタール行きを決めたヨーロッパのチームのなかで、スペインのゴール数は15と決して多くない。5チームで構成された5つの組(予選10組中、5組は5チーム、5組は6チームで構成されていた)のなかでは、スイスと並んで最下位の得点数だ。また、スペインのグループはスウェーデン、コソボ、ジョージア、ギリシアとそれほど強敵はおらず、最大のライバルだったスウェーデンは、ほとんどの試合でズラタン・イブラヒモビッチを欠いていた。

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