マンUのスールシャール監督は、アンタッチャブルな存在なのか。歴史的惨敗も現地メディアが解任なしとみる理由 (3ページ目)
一方、現在のユナイテッドのクラブとしての体質を問う向きもある。この『web Sportiva』でも過去に何度か報じられたように、2005年にレバレッジド・バイアウト(※買収先を担保に資金を借り入れるもの)という倫理観に反する手法でユナイテッドを買収したユダヤ系アメリカ人一家、グレイザー家は基本的にクラブ経営を巨万の富を生むビジネスとしか捉えていない。
だから英国随一の名門が、本来の格に見合わない成績を残し続けても、巨額の利益をあげ続けてさえいれば(実にその通りの現状だ)、特に問題視していないだろうと見られている。
むしろ、圧巻の強さを手に入れて常勝軍団になるより、時に終了間際の得点で劇的な逆転勝利を収めたり、時に不調から不死鳥のように蘇ったりするほうが、"エンターテイメント企業"としては、ファンを獲得しやすいのではないか。『ザ・ガーディアン』紙では、そんな論調で語られることがよくある。
また決定力は健在ながら、守備面の貢献が少ない36歳のロナウドの存在は、ピッチ上では諸刃の剣と言えるが、彼の帰還は、オーナーの巨額の利益につながっている。
ロナウドの加入などにより、ニューヨーク証券取引所における『マンチェスター・ユナイテッド公開有限会社』の株価は、8月27日から10月6日までに2.24ドル高くなり、グレイザー家はその日に950万株を売却して、2,130万ドル(約24億円)の利益を確定させたと同紙は報じた。
地球規模のブランディングを維持する上で、もっとも重要視されているのが、ロナウドとスールシャールだと、このリベラル系高級紙は捉えている。彼らは世界随一のエンターテイメント企業『ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー』におけるミッキーマウスやバンビのような存在だ、とも。
現在、当地のメディアでは、後任候補筆頭としてアントニオ・コンテの名前が上がっている。しかし、芯が強く軋轢を恐れず、気性の激しい本格的なイタリア人戦術家を、ユナイテッドのフロントは本当に欲しがっているのか。
今後、トッテナム、アタランタ、マンチェスター・シティと、強豪との試合が続く。あるいはその間に、今のマンチェスター・ユナイテッドが本当に望んでいるものが見えてくるかもしれない。
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