監督交代さえできないバルサの苦境。強豪には勝てないチームになった
「Koeman sale indemne」(クーマンは無事である)
クラシコ後、スペイン大手スポーツ紙『アス』はそんな見出しを打っている。
ロナルド・クーマン監督が率いるバルセロナは、本拠地カンプ・ノウでレアル・マドリードに1-2と敗れ、9位にまで転落した。にもかかわらず、解任などの動きはない。バルサ幹部のひとりは「監督より選手のレベルの問題」とクーマンを擁護。なんとしてもシーズン終了までは現体制で戦う心づもりだ。
<クーマンをクビにして支払う1200万ユーロ(約15億円)の違約金を捻出できない。新監督に支払う年俸も用意できない>
それがジョアン・ラポルタ会長の本音だろう。2021-22シーズンが終了し、オプション付き契約となっている来シーズンについてクーマンとの交渉が始まるまで、よほどのことがない限り、手が出せないのだ。
しかし、クーマン・バルサは今後を無事に切り抜けられるのか?
クラシコに敗れ、批判が高まっているバルセロナのロナルド・クーマン監督→この記事に関連する写真を見る クーマン・バルサは、戦力的に劣る相手には勝ち点を計算できるチームだろう。事実、直近のディナモ・キエフ、バレンシア戦は無難に勝利していた。しかしながら、バイエルン、ベンフィカ、アトレティコ・マドリード、そしてレアル・マドリードには完敗だった。タイトルを狙うクラブとしては、暗澹たるありさまだ。
「チーム作りの段階」
クーマンはそう言うが、明るい未来が透けて見えるような戦いができているわけではない。スポーツ紙の見出しでも揶揄された"クロス放り込み戦術"など、明らかな迷走だ。
やはり、クーマン監督の責任は重いだろう。オランダ人指揮官はフィジカルインテンシティを重んじ、個の力を第一に求めている。リキ・プッチのようにパスでリズムを作る選手を起用しないのは、その証左だろう。イニシアチブを握ってボールを動かすバルサの哲学とは、出発点で真逆にある。
フィリペ・コウチーニョというカードを切り捨てられないのは、いかにもクーマンらしい。
コウチーニョはスーパーゴールを決めることもあるし、単純なキック&コントロールはワールドクラスと言える。しかし、性格的な問題なのか、単に判断が悪いのか、周囲と連係することができず、独りよがりにボールを持ち、プレーをぶつ切りにしてしまう。クラシコでは終盤にビッグチャンスでクロスを空振りして軸足に当てたように、フィニッシャーとしても計算が立たない。
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