ユーロでイングランドがイタリアに敗れた理由。両チームにはどんな差があったのか

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuter/AFLO

 ユーロ2020決勝。ユーロでは4大会連続となる見慣れた対戦だった準決勝のイタリア対スペインに対し、イングランド対イタリアは、過去にW杯本大会、ユーロ本大会ともに2度ずつしか対戦したことがない、希少な一戦だ。

 W杯で最初に対戦したのは1990年イタリアW杯3位決定戦。W杯の3位決定戦は毎度、いい感じで緩い好試合になることが多いが、バーリで行なわれたこのイタリア対イングランド戦も、例外ではなかった。スコアは2-1。イタリアが勝利した一戦だが、敗れたイングランドには、開催国に花を持たせる余裕さえ感じられた、友好ムード漂う試合だった。

 2度目の対戦は、その24年後。2014年ブラジルW杯、マナウスで行なわれたグループリーグの一戦だ。この時も勝者はイタリア(2-1)だったが、両国ともグループリーグで敗退。ベスト16の座を、人口約500万人のコスタリカと、同約350万人のウルグアイに奪われるという、サッカー大国の名が泣く屈辱を味わっている。

PK戦の末にイングランドを破り、喜びを爆発させるイタリアの選手たちPK戦の末にイングランドを破り、喜びを爆発させるイタリアの選手たち イタリアといえば守備的サッカーの国として知られるが、1990年当時はけっしてそんなことはなかった。プレッシングサッカーを最大の拠りどころに、決勝でブラジルに延長PK負けした1994年アメリカW杯までその流れを維持した。守備的サッカーに転じたのはその後。前で守るプレッシングから、3-4-1-2をベースに、後ろで守るカテナチオにスタイルを変えた。

 イングランドは1966年の自国開催のW杯で優勝を飾っているが、それ以外では1990年大会と2018年大会のベスト4が最高位となる。ユーロの成績はこれまで1968年の3位が最高位だった。

 国内リーグは、繁栄の一途を辿ったが、自国にクオリティの高い選手が誕生しにくかったことが、その一番の理由だ。

 イングランド対イタリア。ユーロ2020決勝は、そうした過去に別れを告げた国同士の対戦となった。今回のイングランドには、過去最高と言いたくなる、クオリティの高い選手が揃っていた。対するイタリアは、4-3-3をメインに、サイドを使い、中盤の支配率を高めながら正攻法で相手に向かう攻撃的サッカーに変身していた。

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