ユーロでイングランドがイタリアに敗れた理由。両チームにはどんな差があったのか (3ページ目)
◆ユーロでイタリア代表が「全力国家斉唱」。選手たちが気合が入りまくりの理由
サイドアタッカー2枚。イングランドの先制点は、ダブルウイングと言いたくなるサイド攻撃から生まれた産物だった。それだけに、カウンター気味に真ん中を強引に突っ込む、以降の攻撃との落差が目についた。
前半を終了した段階でボール支配率は38%対62%。守るイングランド。攻めるイタリアという構図は、後半に入るといっそう鮮明になった。後半22分に生まれたレオナルド・ボヌッチの同点弾は、CKというセットプレーからの産物だったが、それに至った経緯などを踏まえると、生まれるべくして生まれた一撃と言えた。
同点とされたイングランドは、後半途中から、布陣を4-2-3-1、さらには、より攻撃的な4-3-3へと移行させたが、守備的サッカーで始まった癖が抜けきらず。盛り返すに至らなかった。イタリアも後半終了間際、これまで槍として活躍してきた右ウイング、フェデリコ・キエーザをケガで失った頃から、攻撃に勢いが失われていった。
延長、PK戦には必然性を感じた。ただ、結果論で言うわけではないが、その勝者は見えていた気がする。
イングランドのサウスゲート監督は、120分の戦いが終わる、ほんの数十秒前にジェイドン・サンチョとマーカス・ラッシュフォードを投入している。ロスタイムが3分あったが、PK要員として送り出したことは明白だった。実際に2人は、イングランドの3人目、4人目のキッカーとして登場したわけだが、いずれも失敗に終わる。それは試合の水に慣れないうちに(プレー回数は両選手とも1回のみ)、PKという重大な舞台に立たされたことと大きな関係がある。
だが、筆者がそれ以上に指摘したいのは、その選手交代が4人目と5人目だったことだ。延長に突入すれば6人交代できる規定にもかかわらず、である。サウスゲートは120分まで3人しか代えなかった。代えることができなかったと見るが、交代枠を使い切らずに敗れる姿は、監督力の足りなさを示す事例と言えた。
メンバー交代5人制という新ルールとうまく向き合ったのは、紛れもなくイタリアのロベルト・マンチーニ監督だった。計7戦。大会を通した選手の使い方にそれは如実に表れている。
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