ユーロでイングランドがイタリアに敗れた理由。両チームにはどんな差があったのか (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuter/AFLO

 加えてマンチーニは、全7試合を攻撃的サッカーで押し通した。明快な色を発揮しながら戦ったのに対し、サウスゲートは、悪く言えば、どっちつかずのサッカーに陥った。この差も大きかった気がする。

 選手の駒で若干上回っていたのはイングランドだと見る。イングランド人選手のクオリティはかつてより上がっている。しかし、イングランド人監督の質はどうなのか。サウスゲート采配に、この国の悩みを見た気がしたのは筆者だけだろうか。

 今大会は3バックの採用が目立った大会でもあった。攻撃的サッカーに属する4-3-3、4-2-3-1、4-4-2で戦ったチームはイタリア、スペインなど8チーム。守備的サッカーに属する3-4-2-1、3-5-2、5-3-2、3-4-3で戦ったチームはドイツ、オランダなど6チーム。両方を併用したチームはイングランド、フランスなど10チームを数える。

 4-3-3、4-2-3-1、4-4-2が8割方を占めた5年前のユーロ2016と比較すれば、違いは一目瞭然だ。4バックが攻撃的で、3バックが守備的と決めつけるのは危険だが、7、8割方はそう言える。決勝戦のイングランドの戦いぶりを見れば、納得いただけるだろう。

 そんな大会で、これまで守備的サッカーの旗振り役として欧州サッカーをリードしてきたイタリアが、攻撃的サッカー陣の側に回り、優勝した。そのPK戦の勝利は、そうあってほしいと願うサッカーの神の思し召しと筆者は考えることにしたい。イタリアの優勝で2022年W杯に向けて欧州のサッカーは変わるのか。目を凝らしたい。

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