ユーロの本命に躍り出たイングランドに穴はないのか。準決勝以降の見どころポイント

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

 準々決勝でウクライナを4-0と一蹴。ユーロ2020ベスト4入りを決めたイングランド。2014年ブラジルW杯ではグループリーグ最下位に終わり、前回ユーロ2016でも、決勝トーナメント1回戦で小国アイスランドにまさかの敗戦を喫するなど、数年前まで低迷を続けていた。それが、2018年ロシアW杯では一転、7大会ぶりのベスト4進出を果たした。サッカーの母国としての面目を保つことができた。

 それは一時的なものなのか。継続的な上昇ムードの中にいるのか。英国のブックメーカー各社は、イングランドを今大会の本命に推している。英国民の購買意欲をかき立てるため地元勢に甘い予想を下す傾向があるブックメーカーだが、イングランドには準決勝以降をウェンブリーで戦うホームの利が加わる。しかも、定員の75%まで観客を入れて行なわれる予定なので、準決勝で対戦するデンマーク、決勝で対戦するイタリアかスペインは、まさに「完全アウェー」の戦いを強いられることになる。

 欧州の11都市を舞台に行なわれる分散開催といえば、中立性が担保された大会のように聞こえるが、今大会、グループリーグから決勝まで、7試合中6試合をホームで戦うことができるイングランドにとって優位な設定であることは、紛れもない事実である。

ウクライナ戦で先制ゴールを決めたイングランド代表のハリー・ケインウクライナ戦で先制ゴールを決めたイングランド代表のハリー・ケイン 優勝候補の本命に祭り上げられたイングランドが、アウェーに回る他のチームの挑戦を受けて立つ構図になるが、サッカーそのものまで受けに回ることになると危なくなる。イングランドには、強者のメンタリティが十分に備わっているとは言えない。その点ではイタリア、スペインに劣る。このバランスの悪さに、波乱の可能性を感じる。もし、決勝戦を戦うことになった場合、どんな気質で臨めばいいのか。

 具体的に言うならば、ドイツ戦(決勝トーナメント1回戦)のように、若干守備的な3-4-3でいくのか。それとも4-3-3で正攻法にいくのか。準決勝で対戦するデンマークは、イングランド同様、状況に応じて3バックと4バックを使い分けるチームだ。イングランドのガレス・サウスゲイト監督とデンマークのキャスパー・ヒュルマンド監督は、そうした意味で似たもの同士と言える。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る