2021.07.02

目立ちすぎるのも逆効果。スウェーデンのフォルスベリが見せた「特殊な10番」の姿

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカースターの技術・戦術解剖
第65回 エミル・フォルスベリ

<堅守スウェーデンのクリエイティブ担当>

 ユーロ2020のラウンド16、スウェーデン対ウクライナで、スウェーデンのMFエミル・フォルスベリは同点ゴールを左足で決めた。つづいて得意の右足でポストとバーに当てている。外れた2本のどちらかでもゴールインしていれば、この試合の行方も違ったものになっていただろう。

堅守スウェーデンで攻撃の能力を発揮したフォルスベリ堅守スウェーデンで攻撃の能力を発揮したフォルスベリ この記事に関連する写真を見る  スウェーデンと言えば堅守が看板だ。規則的で合理的なゾーンディフェンスには定評がある。グループリーグのスペイン戦では、スペインがボールポゼッション85.1%を記録したが結果は0-0だった。無理なく無駄なく、スウェーデンらしく淡々と守り切った。

 ただ、守るだけでは勝てない。1950~60年代に活躍したブラジルの名手ジジは、「サッカーは寸足らずの毛布だ」と言った。「足にかけると上半身が寒い、頭からかぶれば足が出る」。

 つまり攻守のバランスをとるのは難しい。攻撃しないなら、相手に800本パスをつながれても、ほとんどボールを持たれていても、スウェーデンは無失点に抑える力がある。だが、守りながらも攻撃しなければいけないのがサッカーなのだ。

 守備第一ではあるけれども、スウェーデンも攻撃はする。長身で強さと柔らかさを兼ね備えたFWアレクサンデル・イサクは注目を集めた。スピードと馬力をみせたFWロビン・クアイソン、右からカットインしての左足の一発があるMFデヤン・クルゼフスキもいた。

 堅守からのカウンターで2トップの個の力勝負が攻撃パターンだが、そのなかで唯一と言っていいクリエイティブ担当が、左サイドハーフのフォルスベリである。

 特別に速くもないし大きくもない。技術は高いが驚くようなフェイントもない。フォルスベリの持ち味は、インテリジェンスだ。パスとドリブルを効果的に使い分け、味方と連係しながらゴールへの道筋を拓いていく。

 典型的な4-4-2のサイドハーフなのだが、近年は4-4-2自体が減っていて、サイドにはスピードが武器のウイングが多くなっている。フォルスベリはむしろ数少ないタイプかもしれない。