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目立ちすぎるのも逆効果。スウェーデンのフォルスベリが見せた「特殊な10番」の姿 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 ただ、プレーメーカーと言えるほどボールが集まるわけでもない。スウェーデンのプレースタイルでは、そこまで攻撃時間がないからだ。フォルスベリも多くの時間で、守備ブロックの一員として役割を淡々とこなしている。

 それでも、守備組織の歯車としてハードワークしながら、突然クリエイティブなプレーで「違い」をつくり出す。これができるのはフォルスベリだけだ。スウェーデンというやや特殊なチームの10番である。

<インサイドの流し打ちシュート>

 キックの名手だ。ドリブルもうまいが、フォルスベリならではの技術は、インサイドキックだろう。

 左からカットインして、右足でファーサイドへ巻いていくシュートが十八番。軸足の踏み込み位置がボールに近く、懐から飛び出すようなキックができる。

 左足の位置がボールに近くて、しかもインサイドで蹴るからそうなるのだが、上半身をひねりすぎない。パワーを出すには上体のひねりが必要なのだが、フォルスベリは上体をあまり動かさず、時計回りの方向へ少しねじる程度だ。

 これはファーサイドを狙う時に、ボールを引っかけすぎないことにつながる。上体を左へ開いてからねじればパワーは使えるが、それだとニアサイドは狙いやすくてもファーサイドに強いシュートを打つには向いていない。野球のバッティングなら、流し打ちでホームランを打てるのがフォルスベリである。

 コンパクトなインサイドキックで横回転、さらにはドライブのかかったシュートでファーサイドを狙える。イタリアのロレンツォ・インシーニェと並ぶ、ファーサイドへ巻くシュートの名手だ。

 ウクライナ戦の同点弾(1-1)は左足だった。その後の2回のチャンスに右足で狙ってポスト、バーに当ててしまったのは痛恨だった。試合を決め損ねているうちに、後半アディショナルタイムのDFマルクス・ダニエルソンの退場で流れが一変してしまった。

 それまでウクライナは、5バックで引いて守っていた。スウェーデンはいつになくボールを保持して、攻撃する展開である。ウクライナは攻めたほうが持ち味の出るチームなのだが、まずは相手にとって嫌な流れにしたかったのだろう。

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