ユーロ16強入りもフランス、ドイツに難あり。ポルトガルは前回優勝時に似た匂い (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

 決勝トーナメント1回戦の相手はスイス。ここは問題ない気がするが、準々決勝に進んだ場合、そこで対戦するクロアチア対スペインの勝者は、難敵だ。特にスペインが勝った場合は、面白くなりそうだ。フランスのFW3人組のような抜けた存在はいないが、スペインは粒ぞろい。スケールは小さいが「全員サッカー」的な魅力がある。一時の低迷から脱した感があるので、フランスがかつてより力を落としているならば、接戦、逆転の可能性は増す。

 ドイツはフランスよりもっと単調だ。高い身体能力と各自の遂行能力を活かした大崩れしないサッカーではあるが、リズムテンポに変化がない。

 かつてのドイツは、フィリップ・ラームを経由すると、サッカーが上品になった。ピッチ上のオアシス的な役割を果たしていたが、今回、その役を期待されているヨシュア・キミッヒ(バイエルン)は、さしたる活躍を見せていない。

 バイエルンで、サイドバック(SB)と守備的MFを務めるキミッヒは、かつてのラームそっくりで、硬質な選手が揃うドイツには欠かせない選手と言いたくなるが、ラームと違うのは、代表チームにおけるポジションだ。3-4-2-1の右ウイングバック。右SBの時よりさらに大外で構えるため、ボールに触れる機会が決定的に少ない。試合の流れに影響を与えにくいポジションでプレーしている。

 タッチラインを縦に駆け上がるオーバーラップに加え、ラームは内側にコースを取るインナーラップでも話題を呼んだが、ウイングバックではそのプレーは不可能だ。

 ラームが内側を突き、大外を右ウイングのトーマス・ミュラーが突く――というかつてのパターンは、すっかり拝めなくなっている。布陣が4-3-3あるいは4-2-3-1から3-4-2-1に変化したことも、大きな原因だ。

 攻撃がさらに直線的で強引になった。同じ監督(ヨアヒム・レーヴ)が指揮を執っているとは思えないサッカーに変化した。ハンガリー戦の後半は、布陣を4-4-2に変化させたが、ちぐはぐな印象は否めなかった。なぜレーヴは、サッカーを変えたのか。ドイツの問題はここに潜んでいる。

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