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CLで大活躍、カンテのボール奪取力を分析。異彩を放つその能力に迫る (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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<ピッチ外もセルフレス>

 パリ郊外でマリ人の両親、7人の兄弟とともに育った。カンテの生い立ちは移民家族の典型であり、同時にフランス代表になる選手の典型でもある。

 フランスでは、都市郊外からしか選手は出てこないと言われている。都市の中心は家賃が高くて住めないが、都市から離れすぎると仕事がない。だから移民系の人々は都市郊外に集中する。移民系の人々が増えすぎると都市郊外はますます移民系しか住まなくなる。

 彼らはバカンスの時期も働くので、子どもたちは長い夏をサッカーに明け暮れ、テクニックと体力を獲得していく......というのが都市郊外代表選手の量産パターンだ。

 カンテはおとなしい子だった。最初のクラブ(シュレンヌ)のコーチによると、戦術理解力は高かったという。献身的なプレースタイルは子どもの時からだったが、いくつものクラブのトライアルを受けてことごとく落とされている。目立たなかったし体も小さすぎた。

 プロデビューしたブローニュでは、練習場にスクーターか徒歩で通っていて、見かねたチームメートが車で送迎してくれていた。高給取りになっているチェルシーでも自家用車はミニ・クーパーである。自己顕示欲というものがない。"セルフレス"は、プレーぶりだけでなく普段からなのだ。

<死角からのボール奪取>

「そのうち、自分でクロスを上げて自分で決めるようになるかもしれないね」

 レスターを奇跡の優勝に導いたラニエリ監督の冗談だが、カンテのフィールド上の稼働範囲の広さは驚異的だ。

 カンテは、ボール奪取のスペシャリストとして知られている。ボールの近くへ行ける運動量もさることながら、タックルのうまさは異彩を放っている。

 得意なのが相手の斜め後方からのボール奪取だ。運動量だけでなくスピードが抜群で、ボールホルダーの死角から一気に寄せてくるから、相手は対応ができないのだ。気づいた時にはすでにボールはなくなっている。この盗みとるボール奪取は、トレードマークになっている。

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