CL決勝に見た「スターより駒」。欧州サッカーの新潮流は面白いのか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

◆欧州でプレーする日本人選手32人の今シーズンを5段階評価で総括。最高評価は誰だ?

 勝利に直接関係しないワザ、テクニックを発揮する選手、強烈な個性を発揮する濃いプレー、クセのあるプレーをする選手はいなかった。抑揚がないと言うか、単調と言うか、スター性のある選手がいなかったのだ。

 決勝ゴールを挙げたのは、ドイツ代表の若手、カイ・ハバーツだった。しかし、その実力は認めるが、ドイツ期待のアタッカーだと煽り、サッカー雑誌、スポーツ雑誌の表紙に据えたところで、売り上げは伸びないと見る。同じくチェルシーのメイソン・マウントしかり。イングランド期待の好選手ながら、華さかさに欠ける。プレーはあまりにも現実的だ。

 マンチェスター・シティのフォーデンも、今後の成長が楽しみなイングランド期待の左利きながら、ある枠組みの中に飲み込まれている感じが拭えない。彼らしさをピッチ上にもっと表現できるのに、と思ってしまう。

 そして、この決勝戦のピッチに立った両軍選手の中で、最も知名度のある選手といえば、デ・ブライネになるが、その彼でさえ微妙だ。たとえば、ウエイン・ルーニー(元マンチェスター・ユナイテッド)と比較するとわかりやすい。感情を剥き出しに、時に悪態をつきながら、プレーしたルーニーに対し、デ・ブライネは同様に頬を紅潮させながらも大真面目に、黙々とひたむきにプレーする。

 昨季の決勝戦には、ネイマール、キリアン・エムバペ(PSG)がいた。ロベルト・レバンドフスキ、トーマス・ミュラー、チアゴ・アルカンタラ(バイエルン)もキャラの立つ選手だった。

 一昨季のCLを制したリバプールの面々も、3FW(モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネ)を中心に独得の臭みを放っていた。それ以前のレアル・マドリード、バルセロナになると、クリスティアーノ・ロナウド、リオネル・メッシに代表される、キャラの立つ、特別な選手が勢揃いしていた。曲者揃いのスター軍団だった。超A級と言いたくなるプレーの中にも、笑いを誘うプレーがいたるところに混じっていた。ピッチには絶えず人間臭さが充満していた。

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