久保建英がビジャレアルに残っていたら...欧州を制した伏兵の戦いに思う

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

 ヨーロッパリーグ(EL)決勝、スペインの伏兵ビジャレアルは、イングランドの強豪マンチェスター・ユナイテッドを相手に堂々と戦っている。90分間を戦い、1-1のまま延長でも決着がつかず、PK戦は11人目まで突入。文字どおり総力戦となった。そしてクラブレベルで明らかに上の敵を下し、最後は歓喜に湧いた。クラブ史上初のヨーロッパカップ戦制覇を達成。スタンドに観客が入っていたこともあり、熱情が全体に伝播する風景は感動的だった。

 もし久保建英がここにいたら――。そんな「たら・れば」が、頭をよぎってしまった。

マンチェスター・ユナイテッドを破りヨーロッパリーグを制したビジャレアルマンチェスター・ユナイテッドを破りヨーロッパリーグを制したビジャレアル 2020-21シーズン、久保はウナイ・エメリ監督の強い要望で、マジョルカからビジャレアルに移籍している。プレシーズンは複数の攻撃的ポジションをこなし、チームに独特のリズムを与えられることで重用されていた。しかし、シーズンが開幕すると、国内リーグはスーパーサブが定位置になってしまい、ELでの出場が主になった。

「プレーの強度や守備で成熟する必要がある」

 エメリ監督は、久保への物足りなさを指摘するようになった。

 もっとも、当時の久保は貴重なバックアッパーだったと言える。事実、国内リーグ第13節まで、すべての試合に出場。ELではグループリーグ全試合に先発出場し、グループリーグ突破に貢献していた。19歳ルーキーとして、追い込まれた状況ではなかった。

 しかしマンチェスター・ユナイテッドとの一戦を見ても歴然だが、エメリと久保の二人はサッカーのフィーリングがまるで合わなかったのだろう。

 エメリは受け身的な戦術家で、相手の強みを消すことからチームを組み立てる。選手を拠点の駒として用い、走力や高さや強度を要求。まずは相手の進撃を止め、ダメージを最小限にするプレーを第一としている。能動的プレーは後回しで、カウンターやセットプレーで得点できたら御の字。後半、同点にされた後にFWカルロス・バッカを下げてボランチのフランシス・コクランを右サイドに起用した点など、最たるエメリ流だろう。

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