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スーパーリーグ構想はなぜ潰えたのか?背景にUEFAとクラブの抗争と財政難 (3ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 ところがその前日、これまでつづいてきた両者の掟は、12のビッグクラブのエゴによって破られた。これまで地下室に置いていたはずの"武器"を取り出し、レアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長が初代トップに座るESLを、地上で初めて使用したのである。もちろん、首謀者のひとりであるアニェッリ会長は、ECAのチェアマンを辞任した。

 UEFAと3リーグ(プレミア、ラ・リーガ、セリエA)が、彼ら裏切り者に対してヨーロッパカップや各国リーグからの締め出しを表明し、強く反発したのも当然だ。

 結局、想像以上の逆風によってあっという間に幻と化したESLだが、ビッグクラブには暴挙に出るに値する切迫した事情があった。それが、コロナ禍による大幅な収入減だ。

 新スタジアム建設のために多額の融資を受けたばかりのレアル・マドリードと、現在約1500億円もの負債を抱えるバルセロナはとくに深刻で、逆にプレミア勢があっさりと撤退した背景には、彼らがチャンピオンズリーグの賞金と同等かそれ以上の収入をプレミアリーグから得ている事情もあるだろう。とにかく、アメリカの投資ファンド「JPモルガン・チェース」から総額約5200億円とも言われる資金を受け取れるESLが、彼らの唯一の希望だったのだ。

 おそらく平常時であれば、彼らはいつものようにUEFAと合意した新フォーマットを受け入れていた可能性は高い。しかし、まだトンネルの出口が見えないコロナ禍で、分配金割合や新フォーマットが承認される前に、彼らは禁断のカードを切るしか道はなかったのである。

 とはいえ、彼らがとった今回の行動には腑に落ちない部分も残されている。果たして、彼らは本気でESLを実現しようとしていたのか、という疑問だ。

 周知のとおり、サッカー界はFIFA(国際サッカー連盟)を頂点とする揺るぎないピラミッドを形成し、一世紀以上の長い年月を重ねて発展を遂げてきた。FIFAの下にはUEFAなど各大陸連盟が、各大陸連盟の下には各国や地域のサッカー協会(連盟)が収まり、チーム、選手、監督、レフェリーらも、そのなかのどこかに所属するという厳格なルールがある。すべての公式戦はそのピラミッド内で開催され、選手の移籍にもFIFAが発行する移籍証明書が必須。プロアマを問わず、あらゆるサッカーの公式な活動は、すべてFIFAの傘下で行なわれる。

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