スーパーリーグ構想はなぜ潰えたのか?背景にUEFAとクラブの抗争と財政難 (4ページ目)
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それがFIFAに絡む汚職事件も生んだ。ただそれは別として、少なくともこの形態を維持することで、サッカーは世界で最もポピュラーなスポーツに発展してきた。その歴史を、サッカーの最先端に立つ稼ぎ頭のビッグクラブの会長が知らないわけがない。
ESLを設立するとなれば、このピラミッドから離脱し、サッカー界全体を敵に回すなかで、独自の新リーグの運営を継続できるだけの資金、人材、環境を整える必要がある。それは、ほとんどミッション・インポッシブルと言っていい。
撤退を決めたアーセナルの声明に、「スーパーリーグへの招待が来た時、保証はないことは知っていましたが、アーセナルとその将来を確実に保護するために取り残されたくありませんでした」という一文があった。つまり、保証はなかったのだ。
おそらく、彼らは本気でESLを始めようとしたのではなく、より強い姿勢でUEFAと再交渉し、より高い収入を手にしたかったというのが本音なのではないだろうか。少なくとも、12クラブが一丸となって真剣に取り組んでいたとは、到底考えられない。
いずれにしても、今回の騒動でビッグクラブが被ったダメージは計り知れない。何より、自分たちを支えてくれていると思っていたファンから受けた猛反発は、ESLの消滅以上の大きな打撃となったに違いない。
そして、これまでビッグクラブとUEFAから蚊帳の外に置かれていた人々の目は、次にヨーロッパカップの新フォーマットに向けられるだろう。じつは呉越同舟だったビッグクラブとUEFAが、結局は彼らの利益を優先して合意した新フォーマットを、はたしてファンが歓迎するだろうか。
かつてのチャンピオンズカップ時代に回帰するのは無理だとしても、今回ビッグクラブの反乱を止めたように、人々の声が商業主義路線をひた走るサッカーピラミッドにブレーキをかけることは、決して不可能ではないはずだ。
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