2021.04.09

ジーコジャパンに引導を渡したFKの名手が蹴った「消える魔球」の衝撃

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 フランス代表GKファビアン・バルテズは、なすすべなくその場に呆然と立ち尽くすしかなかった。どんなボールも後ろにいかせてはならないGKであるにもかかわらず、簡単に見逃し、あえなく三振を喫したという格好だ。

 ロベルト・カルロスが左利きなのに対し、ジュニーニョは右利きだ。キックの種類も、ほぼストレート系だったロベルト・カルロスとは異なり、何でもありだ。ストレート系もあれば、変化球もある。ブレ球もある。現役時代に決めたFK弾は77本。総得点が137ゴールなので、実にその半数以上を占める。ブラジルを代表するFKの名手だ。

 その大半は、長年所属したフランスリーグのリヨンで挙げたもの。ネットがまだ発達していなかった当時、その名を世界に知らしめる機会はほぼCLに限られていた。ブラジル代表歴125回。レアル・マドリードの一員として出場した試合が370を数えるロベルト・カルロスとは、露出度において大きな差があった。

 多くのサッカーファンが「ジュニーニョ恐るべし」と、そのFKに仰天させられた試合をひとつ挙げるならば、2005-06シーズンのCL決勝トーナメント1回戦、対PSV戦になる。

 無回転のFKが流行り始めた頃である。日本ではすでに当時、三浦淳宏(現淳寛)が用いていた。2007年5月にU-22日本代表が戦った北京五輪アジア2次予選の香港戦では、本田圭佑もスライス弾道の無回転FKを決めることに成功していた。ジュニーニョが先述のドイツW杯日本戦で放った一撃も、川口能活の頭上を突く無回転シュートだった。

◆ドイツW杯、稲本潤一は選手として我慢すべき一線を越えてしまった>>

 だが、無回転キックはボールの質と密接に関係する。2006年W杯を機に、ボールはさらに軽くなり、無回転軌道を描きやすくなった。したがって現在、当時の無回転キックを振り返っても、正直あまり感動が湧かない。キッカーの特別な才能を最大限、讃える気にはならないのだ。

 PSV戦におけるジュニーニョのFKをここで取り上げる理由は、無回転ではなかったからだ。明らかにもっと高度なキックだった。