バルサの新戦術は「デジタル化」。成否を握る20歳のキーマンが現れた (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 もちろんかつてのWMと同じではなく、プレーの「文法」が違う。4-3-3や3-5-2といった従来の概念とも異なっていて、全員が攻守をレーンごとに請け負い、その担当レーンも適宜に移動し入れ替わる。このスタイルを簡単に伝える表現がなかなか見当たらない。アナログからデジタルへと似た質的変化だ。

 クーマン監督の変革はデジタル化である。メッシのキーポジションは右のハーフスペース(サイドと中央の間)でこれまでと変わらないが、そのために周囲に何らかの無理を強いることはなくなった。そこがペップ以降の監督たちがつくった修正版とは違っている。

 メッシが依然として偉大な選手であるのに変わりはないが、デジタル化に踏み切ったことで11のポジションの1つになっている。シティにおいてのケビン・デ・ブライネやフィル・フォーデンと同じように、メッシも飛びぬけた能力があっても11分の1という位置づけなのだ。

 この新生バルサでのデストの役割は、第一に「幅」である。

<デジタル化のキーマン>

 前線の左右の、タッチラインを踏むぐらいの場所に選手を配置する。この「幅とり役」はヨハン・クライフ監督の時代から、バルサのマストだった。

 相手のディフェンスラインを釘付けにすると同時に、5レーン(両サイド、中央、ハーフスペース2つの5つのレーン)をすべて活用するために不可欠の役割。たいていはウイングプレーヤーがこの役だが、クライフはミゲル・アンヘル・ナダルのようなDFを起用したこともある。誰かはそこにいなければならないようだ。

 クーマン監督は、デストとジョルディ・アルバを「幅」として起用している。サイドでボールの落ち着けどころとなり、突破からラストパスを供給し、逆サイドからのクロスボールに飛び込んで相手ゴールを急襲する。

 ジョルディ・アルバはこれのスペシャリストだが、デストの登場で両翼が揃った。デスト自身もこの役割がどんぴしゃだったのか、大車輪の活躍ぶりだ。

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