『鬼滅の刃』の産屋敷耀哉は、サッカークラブの理想のオーナー像である (3ページ目)

小澤 スペインのサッカー界に照らしてみると、ビジャレアルのフェルナンド・ロッチ会長が最も産屋敷耀哉に近い存在ではないかと思います。ロッチ家はビジネスで成功したファミリーで、兄は国内最大手のスーパーである「メルカドーナ」の筆頭株主でもあります。フェルナンド・ロッチ会長は、その「メルカドーナ」の株式を所有しながら世界的タイルメーカーの「パメサ・セラミカ」の会長を務めていて、ビジャレアル一帯にあるセラミックを集合体にして世界にアピールしようと考え、1997年に当時まだ1部リーグの経験がなかったビジャレアルというクラブの経営権を取得しました。

 しかも、クラブにお金を投じてチームを強化するだけではなく、施設の整備や育成組織の充実を図ったのが、彼がトップとして優れていた点でした。象徴的だったのが、2011-12シーズンにミゲル・アンヘル・ロティーナ監督率いるチームが2部に降格してしまった時のことです。彼は、チームが2部に降格して収入が減るなか、トップチームの強化費を削る一方で、育成に使う予算を維持する英断を下しました。それにより、今シーズンのトップチーム25人のうち13人がカンテラーノ(下部組織出身選手)というクラブになりました。この数字は、現在バスク勢2チーム(レアル・ソシエダ、アスレティック・ビルバオ)の次にランクされています。

 それと、現在は自分のビジネスやビジャレアルの経営を息子に託し、その息子がGMとしてとてもうまくやっている部分も、産屋敷家に近いと思います。

倉敷 産屋敷家でも、想いは代々受け継がれてきました。

小澤 はい。現在は選手の獲得に関しては会長の息子が受け持っていますし、家族経営でビジャレアルというクラブを強化しています。そういう意味では、スペインのロッチ家もイタリアのアニェッリ家のような存在だと見ることができます。

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