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「ぬりかべ」が襲ってくる。ブラジルサッカー史上最高級ボランチの特殊能力 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

◆福西崇史が歴代日本人ボランチを格付け。ピッチを支配した名手ベスト10

 かえすがえすも残念だったのは、2003-04シーズンだ。準々決勝でミランを大逆転勝利の末に下してデポルティーボは準決勝に進出。モウリーニョ率いるポルトと対戦した。

 ドラゴンで行なわれた第1戦のアウェー戦は0-0。まずまずの結果だったが、マウロ・シウバはそこで累積2枚目となる警告を受け、第2戦のホーム戦に出場することができなくなった。

 第2戦の結果は0-1。デポルティーボとマウロ・シウバはCL決勝進出を逃した。マウロ・シウバがスタメンを飾っていれば、決勝にはデポルティーボが進出していた。そう言い切りたくなるほど、マウロ・シウバの存在感は図抜けていた。

 先述したように、ボランチ、守備的MFには様々なタイプがある。90年代後半から2000年代にかけて、少なくともスペインリーグで活躍が目立っていた守備的MFといえば、フェルナンド・レドンド(レアル・マドリード)とジョゼップ・グアルディオラ(バルセロナ)だ。いずれもパス能力に長けた、低い位置で構えるゲームメーカータイプだった。

 彼ら2人を無理矢理ひと昔前の日本代表でたとえるなら、遠藤保仁だ。とすれば、対するマウロ・シウバは日本代表なら今野泰幸になる。だが、今野には申し訳ないが、今野よりうまかった。派手さはなかったが、マウロ・シルバもパス出しに間違いのない選手だった。ボールを奪取した直後に出す最初のパスが、なにより機知に富んでいた。デポルティーボでは、1994年W杯のブラジル代表で、ドゥンガが担っていた役割を同時にこなしていた。単なる守り屋ではなかった。もちろん削り屋でもなかった。

 欧州に渡り、デポルティーボで13シーズン、フルに活躍した名手。欧州サッカー界で最もコンスタントに活躍したブラジル人ボランチ。ブラジルサッカー史上、最高のボランチは誰だと言う話になったとき、少なくとも筆者はカゼミーロでもドゥンガではなく、マウロ・シウバを推す。ちなみに配偶者はテルミさん。日系人だという。

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