2021.02.06
「反逆児」スアレスが爆発中。バルサ→アトレティコでどう変わったか

- 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
- photo by AFLO
◆中田英寿の脚を削りベッカムを一発退場に。シメオネのすごすぎる武勇伝>>
密集にドリブルで突っ込んでいくスアレスは、頭を下げて頭から突っ込んでいく。これも切り返しで足を「抜く」のと似ていて、頭を前へ出すことで体重移動をしているのだろう。わりと重めの体を素早く動かすための体の使い方が、本能的に身についているのだと思う。
<真のストライカーのプレーを満喫>
アトレティコでは「第一ヴァイオリン」と認定されていることも、スアレスのゴール量産につながっている。バルセロナではメッシが優先だったが、アトレティコでは言わばスアレスにシュートさせるために周囲が動いている。それが「第一ヴァイオリン」と呼ばれる理由だ。
守備能力も高いスアレスだが、アトレティコでは最初に守備をやめていい選手になっている。前線中央の守備をふたりで分担する時もあるが、それ以上のタスクはない。メッシの分を守らなければならなかったバルサ時代との違いだが、アトレティコ自体もかつての10人ブロックではなく、9人で守備をするケースが増えている。
2トップを4-4の守備ブロックに接続して、ヨーロッパで減少傾向だった4-4-2のシステムを復活させたアトレティコが、今季はスアレスを前線に残す5-4-1のブロックに移行しているのだ。
中盤の守備の圧力は若干弱くなったかもしれないが、引いた時の5人のディフェンスラインには穴が空きにくい。MFにコケ(スペイン)以外は攻撃型を並べていることもあり、中盤でのボール奪取に以前ほど重きを置かなくなったのは合理的な選択だと思う。ただ、やはりスアレスを獲得したのが大きいのではないか。
シメオネ監督は真のストライカーをどう使うかの塩梅を心得ていて、スアレスはアトレティコで真のストライカーとしてのプレーを満喫しているように見える。