2021.01.10

モウリーニョ戦術の最重要人物。急所を突かせない新スタイルとは?

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカースターの技術・戦術解剖
第40回 ピエール=エミル・ホイビュア

<ニアゾーンを埋めるMF>

 イングランドプレミアリーグ、トッテナムの看板はハリー・ケイン(イングランド)とソン・フンミン(韓国)だが、チームを支える重要な役割を果たしているのがピエール=エミル・ホイビュア(デンマーク)だ。

今季のトッテナムのキーマンになっているホイビュア 今季からスパーズ(トッテナムの愛称)に加入、4-2-3-1システムの「2」を担っている。的確な判断とボールコントロール、186㎝の体躯でフィジカルコンタクトに強く、運動量も抜群。セントラルMFとして攻守をリンクする役割だが、従来のボランチとは少し違う動き方をしている。

 ホイビュアとムサ・シソコ(フランス)には、一般的なボランチとは違うタスクがある。守備で引いた時に、センターバック(CB)とサイドバック(SB)の間に入るのだ。ボランチのひとりがハーフスペース(サイドと中央の間)を埋めて下がることで、スパーズは一時的に4バックから5バックに移行している。

 ハーフスペースの先端、ニアゾーンと呼ばれるスペースは、攻撃側にとって決め手と言っていい。マンチェスター・シティ(イングランド)が典型だが、サイドで起点をつくったあと、もう1つ内側への進入を図ることのメリットが大きいからだ。

 まずクロスボールの距離が近くなるので、その分精度の高いラストパスが期待できる。さらにターゲットへの到達時間も短くなるので、守備側には対応時間が限られてくる。

 また、ニアゾーンへ進入された時点で、守備側はポジション修正を余儀なくされる。止まっていれば、DFとGKの間へのクロスボールに反応が遅れるからだ。つまり、人が動くということ。動いている守備側選手の周辺には、必ずスペースができる。ゴール方向へ戻っていれば、逆方向へのクロスボールには反応できない。

 ラストパスの距離が近い、DFが動く、この2点でこのスペースへの進入は得点へ結びつきやすくなるわけだ。