2020.12.28

中田英寿を上回る天才に起きた悲劇。リーガに「ぶっとんだ自信」で挑んだ【2020人気記事】

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 実はこの数カ月前、財前は膝の前十字靭帯を断裂していた。治療、リハビリを重ね、復活してスペインに入ったが、万全ではなかった。そして入団して3カ月後、再び、前十字靭帯を痛めてしまう。復帰を急いだことが裏目に出た。踏ん張った瞬間、同じ左足だった。

 財前は帰国を余儀なくされた。選手登録はされておらず、スペイン挑戦は、言わば幻に終わった。

――もしタイムマシンに乗れたら、ログロニェスにいた自分に何と声をかける?

 そんな問いに、財前はこう答えていた。

「『お前、イメージが先行しすぎているんじゃない?』ですかね。俺は体を作る前にヨーロッパに行ってしまった。中田はJ1で実績を作ってからで、正解。まずはプロの試合でプレーしてっていうので、出場機会があるチームを選んだのも賢い」 

 しかし、彼はこうも言葉を継いだ。

「俺は前十字を3回も切って、サッカーを続けられた。ケガも実力のうちですけど、その後で、『どうしたらサッカーできるか』でやってきました。大ケガをした人でも、サッカーをやれる姿を見せられたと思っています」

 誇らしげにそう言った財前は、ベガルタ仙台、モンテディオ山形で昇格の切り札になるプレーを見せている。そして2012年1月に引退するまで、中田、宮本など日本を代表した選手より、長く現役生活を続けた。それはひとつの勲章だった。

 ちなみにログロニェスは、財前が在籍したシーズンに2部へ転落。巨額の負債が発覚し、坂道を転げ落ちていった。そして2009年には、財政破綻で消滅している。
(つづく)

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