2020.12.18
モドリッチが大成したのはなぜか。超絶プレーを生み出す右足の秘密

- 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
- photo by AFLO
◆ロナウドはポジション転職最大の成功例。ウインガーからストライカーへ>>
高身長が多いクロアチア人のなかで、172㎝のモドリッチはかなり小柄だ。体つきも細身。しかし、タフな環境で鍛えられて運動量があり、守備もうまかった。フィジカル面でタフなプレミアリーグにも適応し、レアル・マドリードへ飛躍することになる。
仮にモドリッチが日本人だったら、もっと大事に育てられていただろう。隣国のいつ大ケガをするかもわからないリーグに、武者修行に出すような真似はしないはずだ。ただ、日本人MFがヨーロッパへ移籍すると、常に問題になるのが守備力である。守備を身に着けないまま移籍してしまうので、行ってから苦労するケースが多い。
クラニチャールがいたこともあるが、10代のうちにタフな環境でプレーした経験は、モドリッチにとって大きかったと思う。
もしかしたら、ボスニア・ヘルツェゴビナで大きなケガをして、世に知られないまま潰れていた可能性もある。それだけに、ディナモ・ザグレブ方式がよいと言いたいわけではない。
だが、ヨーロッパは才能だけでは認めてくれないという違いはある。才能だけの選手ならほかにもいるのだ。だから、甘やかしてスポイルすることは少ない。潰してしまう危険はあるが、それならそれで仕方がないという考え方なのだ。
<アウトサイドキックの使い手>
俊敏でテクニックは抜群、ゲームを読めて的確な判断ができる。モドリッチとクロースはフィールド上の監督と言っていい。
モドリッチのテクニックで目立つのが、右足のアウトサイドでのパスだ。長短のパスをアウトサイドから繰り出す。
かつてはアウトサイドの使い手はたくさんいた。アウトサイドキックが最も自然な蹴り方だったフランツ・ベッケンバウアー(当時西ドイツ)はともかく、ヨハン・クライフ(オランダ)やボルフガング・オベラート、ギュンター・ネッツァー(以上当時西ドイツ)など、アウトサイドでの弧を描くロングパスはプレーメーカーの得意技だった。