2020.10.06

ロシアのイメージを一変させたW杯。
決勝会場で襲われた違和感の正体

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

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ルジニキ・スタジアム(モスクワ)

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 スポーツ観戦は旅。W杯やユーロの本大会といった長期のビッグトーナメントを取材しようという時は、その前に旅程を練り、宿を探す。しがない一介のライターゆえ、安い経費で、可能な限り多くの試合を、できるだけ快適に観戦する――という難題を自らに課すことになる。高揚する気持ちを抑えながら地図や旅行の予約サイトとにらめっこする。

 2018年ロシアW杯の場合は、1カ月強に及ぶロシア滞在の中で、ベースにする街をモスクワに決めていた。ルジニキで開幕戦と決勝を含む7試合、スパルタクで5試合の計12試合が行なわれるからだ。

 この数は大会期間中の観戦を予定していた全21試合の半分以上に当たる(実際に観戦した試合は22試合だった)。モスクワ以外で行なわれる残りの試合は、基本的に日帰りとし、それが不可能な場合は現地泊とした。ロシアの国土は、日本の45倍とバカでかいが、大会期間中、公共交通機関を真夜中まで稼働させていたので、高い確率で日帰り旅行が可能だったのだ。

 日本代表が戦った4都市、サランスク(コロンビア戦)、エカテリンブルク(セネガル戦)、ボルゴグラード(ポーランド戦)、ロストフ・ナ・ドヌ(ベルギー戦)の場合、日帰りの旅は、モスクワ-サランスク往復のみだった。朝イチのフライトでサランスクに飛び、試合後、夜行寝台列車で8時間掛けてモスクワに戻ってきた。

 それ以外の3都市を現地泊としたのは、原稿の締め切り時間との兼ね合いもあるが、単純にモスクワから離れすぎていたことが一番だ。日本代表を追いかけるだけなら、モスクワはベースにする場所として最適ではなかった。しかし、それではW杯そのものを愉しむことができない。

ロシアW杯では開幕戦や決勝戦など計7試合が行なわれたルジニキ・スタジアム 筆者は宿の予約サイトで、ルジニキまで徒歩20分というアパートメントを発見。ライター仲間2人と計3人で、期間中、通しで借り切ることにした。場所はスタジアムに最も近い地下鉄1号線スポルチーヴァナヤ駅と、そのひとつ手前のフルンゼンスカヤ駅との中間あたり。原宿駅あるいは代々木駅から、国立競技場を目指す感覚である。