2020.09.29

久保建英のすばらしき「ふてぶてしさ」。
バルサ戦で見せた華麗な駆け引き

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

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 カンプノウでの久保建英のプレーは、ひとつのきっかけになるかもしれない。

 バルセロナを相手にした一戦で、ウナイ・エメリ監督が率いるビジャレアルは、残念ながら弱者の姿を晒すことになった。強者であるバルサに対し、完全に腰が引けていた。相手の勢いに押される形で失点を重ね、慌ててしまい、いつものプレーができなかった。日頃は老練なプレーを見せる元バルセロナのスペイン代表FWパコ・アルカセルも、かつてバルサで戦力外になった事実を裏付けるように、歯が立たなかった。

 前半だけで、4-0と大量のリードを許してしまったのだ。

バルセロナ戦に後半29分から出場した久保建英(ビジャレアル) しかしながら、74分にナイジェリア代表サムエル・チュクウェゼと交代でピッチに入った久保は違っていた。驚くほどに、物おじしていなかった。自然体でパスを呼び込み、ボールを集め、積極的に仕掛け、緩慢になりつつあったバルサ陣営に脅威を与えていた。

 79分、久保は右サイド奥まで走り込むと、裏へのパスを引き出し、ゴールラインから右足で折り返す。ボールは相手GKにブロックされたが、あと一歩のところだった。何より、攻撃に深みをつけ、押し込むことによって、戦いの勢力を挽回させていた。

 その直後にも、中盤でパスを繋ぎながら、右サイドでボールを持ち、エリア内で待つ味方に左足でパスを通している。マヌエル・トリゲロスがボールをうまく処理できず、チャンスをフイにしたものの、コースを作り出す駆け引きは見事だった。右サイドから中央にかけ、久保の独壇場になりかけていた。

 そして終了間際には、右から切り込み、リーガ・エスパニョーラ最高の左サイドバックのひとりであるスペイン代表ジョルディ・アルバと対峙。少しも怯むことなく、縦への突破を見せることで重心をずらし、中にコースを作った。そして得意とする左足で巻くようなシュートを打ち込んでいる。GKに防がれたが、この日、ビジャレアルが最もゴールに迫った瞬間と言えるかもしれない。

 久保は胆力に優れている。どんな敵でも、状況でも、ふてぶてしいまでにフラットな状態でプレーできる。それは自分の技量を絶対的に信じているからだろうが、彼が持つ独特の空気が自然とパスも呼び込む。試合結果がほぼ決まった状況ではあったし、たった15分程度のプレーではあったにせよ、そうしてボールが集まる雰囲気は、今後に向けて明るい展望を暗示させた。