2020.09.11

バイエルンで無双のチアゴ・アルカンタラ。クセが強いプレーが魅力的

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

サッカースターの技術・戦術解剖
第25回 チアゴ・アルカンタラ

<バイエルンに不可欠な司令塔>

"うるさい"ぐらいのテクニシャンである。シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタの後継者として注目されたバルセロナ時代を経て、2013年にバイエルンに移籍。当時のジョゼップ・グアルディオラ監督たっての希望だった。

バイエルンで大活躍。不可欠な司令塔になったチアゴ 父親は元ブラジル代表のマジーニョ。イタリアで生まれ、その後ブラジルとスペインを往復するような子ども時代は、まさに父親の「仕事の関係」だったが、13歳でバルセロナの下部組織に入った。

 バルサのカンテラ育ちらしい洗練に、ブラジルの外連味を加えたようなチアゴのプレースタイルは、大物感に溢れていた。それからすると、バイエルンでの活躍は少し物足りない感じもあった。飛びぬけてうまく、十分活躍もしていたのだが、チアゴへの期待値はもっと高かったと思う。

 それでも2019-20シーズン、チャンピオンズリーグ(CL)を制したバイエルンで、チアゴはようやく実力に相応しい評価を得られたのではないだろうか。力強いバイエルンの高価な装飾品ではなく、不可欠な存在になっていた。

 チアゴのポジションは中盤の底だった。スペインでピボーテ、イタリアならレジスタと呼ばれる役割。かつてグアルディオラがヨハン・クライフ監督に与えられた「クワトロ」でもある。バイエルンのパスの多くは、チアゴを経由する。

 攻撃的なポジションならどこでもこなせるチアゴをここに置いたのは、後方のビルドアップを確実にするためだ。後方でボールを確保し、そこから前線の両翼に長いパスを配球するのがバイエルンのやり方である。

 このロングパスでもチアゴは重要な役割を演じていて、アメリカンフットボールならクォーターバックだ。

 後方ではチアゴを中心にボールを握るバイエルンだが、そこからは一気に前線へフィードする。快足のウイングへボールが収まった時点で、ボールより前にいる味方選手がいないのがポイントだ。