2020.09.04

麒麟児がくる!フランスサッカーが育てた弱点のない天才は17歳

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカースターの技術・戦術解剖
第24回 エドゥアルド・カマビンガ

<弱点のない天才>

 10代で傑出した才能を示す選手は「天才」と呼ばれる。まして16歳にしてプロデビューし、リーグの月間MVPに選出されるなら、何と呼ぶべきだろう。

フランスのレンヌで活躍する17歳のカマビンガ エドゥアルド・カマビンガはまさにそれなのだが、こうした早熟の天才がその後も順調なキャリアを送るとはかぎらないものだ。ただ、カマビンガの場合はあまり心配はいらない気がする。

 もちろん、この先に深刻なケガに見舞われるかもしれないし、何が起こるかわからないのが人生だが、その手の不運がなければ順調に成長していくだろう。

 これまでもフランスは、多くの「天才」が現れては消えていった。クレールフォンテーヌ国立養成所の出身で、いまだに最大の才能だったと言われているニコラ・アネルカは、その天賦の才を思えば期待外れだったと言っていい。

 ハテム・ベン・アルファ、ペギー・リュインドゥラ、サミル・ナスリ、ヨアン・グルキュフ......このリストは長くなりそうだが、トップレベルで能力を発揮した時期もあるだけ、彼らは成功例なのだろう。彼らの陰には日の目を見なかった何人もの「天才」たちが埋もれているに違いない。

 10代の天才が、20代、30代でも天才でありつづけるのは、実はそう簡単ではない。サッカーは才能がすべてではないからだ。

 才能は、その選手がどこまで行けるかの「可能性」を表しているにすぎない。

 ドリブルで3人を手玉にとる才能、浮き球をボレーでポストに命中させる才能、ほかの選手には想像もつかないパスコースを見出す才能......こうした才能が図抜けていれば、その世代で天才と呼ばれる。

 それがプロのレベルでも通用すれば、リーグで活躍できる。チャンピオンズリーグ(CL)決勝やワールドカップでも武器になるのなら、世界の頂点まで行ける「可能性」がある。

 ただ、それは「可能性」にすぎない。才能が発揮されるのは、90分間でせいぜい2、3分にすぎないからだ。残りの85分以上は持ち前の才能とは違う仕事が要求される。それが少なくとも所属するリーグならリーグの平均レベルにはないと、出場することすら難しくなるのだ。