ネイマールが特別な才能を発揮。プレッシャーを無効化する技術の勝利

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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サッカースターの技術・戦術解剖
第22回 ネイマール

<CLで特別な才能を発揮>

「70年代は基本的に技術だった。80年代は選手がより走るようになったが技術は後退した」

CLで活躍中のパリ・サンジェルマンのネイマールCLで活躍中のパリ・サンジェルマンのネイマール ヨハン・クライフがまだ現役選手だった1980年代のコメントだ。じつは、技術の後退については第二次世界大戦以前から言われていて、たぶんこの先もずっと言われつづけるだろう。

 実際には選手が下手になっているわけではない。むしろ平均レベルはどんどん上がっている。それでも技術が後退したように見えるとしたら、それは守備側のプレッシャーが増したからだ。あるいは、技術よりも体力や戦術に重きを置くチームが増えたことで、本当にハイレベルな技術を持った選手が冷遇されているからかもしれない。

 パリ・サンジェルマン(PSG)がチャンピオンズリーグ(CL)ファイナルへ進んだ。クラブ史上初の快挙であり、準決勝に勝った時点で大きな成功を収めたと言える。組み合わせに恵まれた面はある。一発勝負の準々決勝、決勝で対戦したのはアタランタ、ライプツィヒだった。

 気鋭の2クラブではあるが、バルセロナやバイエルンのようなビッグクラブではない。ただ、それだけにPSGとアタランタ、ライプツィヒの対戦は興味深いところがあった。

 アタランタ、ライプツィヒは、どちらもビッグクラブと同じ土俵で戦おうとしていないチームである。市場で値の張る技術の高い選手の獲得競争には参戦せず、体力や若さに重点を置いた補強を行ない、戦術と体力のサッカーで躍進した2チームだ。

 カタール資本が入って以降、金満クラブを絵に描いたような補強策をとってきたPSGとは対照的といえる。

 アタランタ、ライプツィヒはどちらも健闘し、彼らのサッカーが上回っているように見えた時間もあった。だが、明暗を分けたのは、結局彼らにはなく、PSGにあったものだ。

 特別な才能(=ネイマール)である。

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