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ベンゲルは才能を発揮させる名人。最高傑作は「無敵」のアーセナル (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 GKにはドイツ代表のイェンス・レーマン。4-4-2の4バックの中央はコロ・トゥーレ(コートジボワール)とソル・キャンベル(イングランド)のコンビ。このふたりのスピード、パワー、高さは、無敗優勝の支えになっていた。

 当時のプレミアリーグは、多くのチームがアーセナルと同じ4-4-2を採用していた。重要な攻め手はハイクロスで、どのチームにもパワフルなFWがプレーしていたものだ。アーセナルのセンターバック(CB)コンビの高さと強さは、プレミア独特の"空爆"を跳ね返すうえで不可欠だった。

 トゥーレとキャンベルはふたりとも黒人。フランス人のベンゲルは早くから黒人選手のパワーやスピードを買っていて、コートジボワールのクラブと提携を持つなど独自のコネクションを築いていた。

 現在では黒人CBはむしろ主流になっているが、ベンゲルは時代を先取りしていたと言える。右SBのローレン・エタメ(カメルーン)、左のアシュリー・コール(イングランド)も黒人選手である。ふたりともスピードがあるだけでなくテクニックに優れていた。

 MFの中央はパトリック・ビエラ(フランス)とジウベルト・シウバ(ブラジル)。長身でパワー、運動量、守備力が抜群だった。ふたりともテクニックに優れ、攻守において安定感がある。ビエラはより攻撃的で、中盤から一気に前線へ飛び出していくダイナミックなフリーランニングは、有効な攻め手になっていた。

 サイドハーフは右がフレデリック・リュングベリ(スウェーデン)、左はロベール・ピレス(フランス)。リュングベリは走力があり、神出鬼没。ピレスは足技とパスワークに冴えをみせるプレーメーカーのタイプ。ピレスとアンリの左サイドは、そのままフランス代表の武器にもなっている。

 2トップはアンリとベルカンプ。アンリは攻撃の先頭に立ち、カウンターアタックでは左に開いてロングパスを受けて、そのままフィニッシュに結びつけるのが十八番。相手の背後に5メートルのスペースがあれば、ボールをプッシュしてスピードでぶっちぎれるので、この「5メートル・アドバンテージ」が猛威を奮った。左45度から、右足のインサイドでファーポストへ巻いていくシュートでゴールを量産した。

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