20年先を行っていたクライフの戦術。ドリームチームはこうして生まれた (5ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

 もう1つの戦術のキーは、9番。センターフォワード(CF)だが、いわゆる「偽9番」(CFの位置から中盤に引いて、ゲームをつくる役割)だ。4番、6番を経由してボールを前進させると、ウイング(7番、11番)が相手DFの間へ入り込む。相手が4バックなら、その間に3人のFWがポジションをとることになるが、そこから9番は引くのだ。

 相手CBのひとりが引く9番についていけば、相手DFライン3人の間にウイングが残り、それぞれのプレーできるスペースは大きくなる。9番に相手CBがついていかなければ、9番がフリーになる。この場合、ウイングふたりで4人のDFを釘付けにしているので、その手前には数的優位ができている。

 偽9番の代表はミカエル・ラウドルップ。フリーなら何でもできるアタッカーだった。ウイングにフリオ・サリナスやガリー・リネカーといった典型的なCFを起用していたのも、フィニッシュが大きな仕事になっていたからだろう。

<トータルフットボールの攻撃を進化させた>

 素早く洗練されたパスワークは圧倒的で、陣形を縮めて相手を封じ込めようとするプレッシングの"四角"に対して、その上から大きな"円"をかぶせるように選手全体がポジションをとり、プレッシングを解体した。ピッチに散開した選手はさほど動かず、前後左右にボールを動かしつづけた。

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