ベンゲル対クライフ。26年前、初めてCLを観た驚きのスタジアム (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 ジェノバで空き時間が生まれたので、どうしようかと思案していた時、現地の通訳から「だったら、モナコに行ってくれば? ちょうどバルセロナとモナコが試合をするから」と、提案された結果だった。

 モナコとジェノバはどのような位置関係にあるのか。別の国にある両都市が普通列車に揺られること2時間で到着する距離にあるとは、想像していなかった。

 ヴェンティミーリアという駅に到着すると、厳めしい顔をした警察官が乗り込んできた。そこはイタリアとフランスを隔てる国境の駅で、そこから先、つまりフランスに行くためには、パスポートの提示が必要だった。いわゆるシェンゲン条約の内容が施行されたのは95年3月なので、これはパスポートコントロールが廃止されるおよそ1年前の前の出来事になる。

 だが、モナコはフランスではない。バチカン市国に次ぐ世界で2番目に面積の小さな国。正式名称はモナコ公国になる。しかし、フランスとの国境を遮る何かがあるわけではない。両国間は当時もパスポートを提示することなしに行き来できた。同様に通貨もフランスフランがそのまま使われていた。地元のクラブ、ASモナコがフランスリーグに所属することに違和感はなかった。

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