2020.01.21

西野朗率いる「アキラ・タイランド」の冒険。2026年W杯を目指す

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

タイ代表指揮官として2026年のW杯を目指す西野朗監督「厳しいですよ、ここからは」

 U-23タイ代表(A代表も兼任)を率いる西野朗監督は、AFC U23選手権の準々決勝の前日に、そう打ち明けた。

 サウジアラビアとの大一番を控えた夜、タイ代表の公開練習には地元メディアは多かったものの、それ以外の取材者は自分しかいなかった。だからだろうか、少ない時間のなかでも率直な話を聞かせてくれた気がする。時速100キロ近くで飛ばす、ちょっと危ないバイクタクシーに乗ってきた甲斐があった。

「(サウジアラビアとの)力の差は感じます。ここまではよく戦ったと思いますけど」

 たしかにグループステージでは、全員が死力を尽くしてなんとか突破にこぎつけた。初戦こそバーレーンに5-0で勝ったものの、オーストラリアには逆転で1-2と敗れ、最後のイラク戦では1-1で迎えた最終盤に相手の右クロスからゴール前で完璧なヘディングが放たれた。

 これが決まれば敗退となる場面、西野監督の脳裏には「(逆転負けしたロシアW杯ラウンド16のベルギー戦が)よぎった」が、GKが防いで勝ち抜け。試合後のスタジアムには「ニシノ! ニシノ!」のコールがこだました。

 開催国タイの代表チームは、ベスト8に唯一生き残った東南アジア勢だ。近年、目覚ましい躍進を遂げるベトナムも、グループステージを最下位で終えている。アジアでまだまだ格下と捉えられるこの域内の代表として、大会の優勝候補サウジアラビアに立ち向かう。タイ史上初の五輪出場に向けて、最大の試練が待ち構えていた。

 会場はバンコクのメインスタジアムのラジャマンガラではなく、北の先にあるタマサートながら、チケットは売り切れ。何事にもあまり焦ることがない微笑みの国の人々は、キックオフには間に合わずとも、前半の中頃くらいからスタンドを埋め始めた。