6年かけて1部のレギュラーに。ファン・ウェルメスケルケン際の生き方 (3ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Pro Shots/AFLO

 6年をかけてつけた自信は、ちょっとやそっとのことでは揺らがない。もちろん、こういうステップアップの仕方がすべての選手に適しているというわけではないが、際にとっては、この方法でしか1部にまでたどり着くことはできなかった。

「僕は一個一個、積み上げていく性格ですし、そういったサッカー人生なんだと思います。ヘンに2ステップ、3ステップ上がってしまうと、適応ができるまで、試合に出られない期間が長くなると思うんです。逆に一個一個のステップだからこそ、毎シーズン、きちんと試合に出ることができている。それ(試合に出られない期間)は自分のキャリアにとって痛手だと思うので、そういったことがなくて、いいステップの踏み方をしているなと思います」

 同僚の中山は、五輪チームにいけば主将を務めることもある。だが、長距離移動のあとは、ズヴォレで出場機会を失っている。難しい時期にいるが、その中山への目線も際らしい。

「大変だとは思いますけど、若い時点で(移動などを)経験できるという時点で、大きな糧だと思います。その糧をどう使うかは人それぞれだと思うので、どう対応してどう自分の体を管理してくのか、どう結果を残していくのか。自分自身に還元していってほしいなと思います」

 堅実に歩んでいくのが自分の人生。それは際にとって、ひとつのアイデンティティのようですらある。

「(2013年に)契約もない状態でオランダに来て、そこから契約までこぎつけて、そして今1部にいるという状況は、本当に自分が描いたとおりにきているんです。これからも次の目標を実現するだけなので、一個一個、積み上げていくだけですね」

 最終的な目標は、日本代表としてW杯でプレーすること。際はズヴォレ入団時にそう明かしている。早熟の天才とは少し違う、こつこつと経験を積み重ねてきたこんな大器晩成型の選手がいてもいい。

 オランダリーグは1月17日に再開、ズヴォレはユトレヒトと対戦する。

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