ドリブル王選手権! アウトサイドで抜くメッシ以上の名手がいた

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Press Association/AFLO

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スポルティーバ・新旧サッカースター列伝 第11回

ドリブルはサッカーのプレーのなかの一つだが、そのドリブルのすばらしさでファンを熱狂させ、喜ばせてきたスターがいる。今回からは、自分の得意の型で相手DFを抜きまくった、名ドリブラーたちを紹介していく。

◆ ◆ ◆

<マシューズ型選手権>

 今回から数回は「ドリブル王選手権」、史上最強のドリブラーは誰かを考えたい。

 初回は「マシューズ型選手権」。アウトサイドで抜いていくフェイント・モーションの系譜を追ってみたい。とはいえ、もう本人の名前がついているぐらいなので、スタンリー・マシューズの優勝決定と思われるかもしれないが......まあ、行ってみましょう。

アウトサイドを使うフェイントの元祖・マシューズアウトサイドを使うフェイントの元祖・マシューズ スタンリー・マシューズは、言わずと知れた1956年の第1回バロンドール(欧州年間最優秀選手)受賞者。マシューズを表彰したいがために賞を作ったとも言われているぐらいの伝説的名手(ストークシティやブラックプールで活躍。イングランド代表で54試合出場)で、そのトレードマークが「マシューズ・トリック」と呼ばれたフェイントだった。

 右ウイングのマシューズのフェイントは瞬間的な速さ、というより間合いのとり方がポイントだったと思う。小刻みなステップで対峙する相手DFとの間合いを計り、右足のアウトでヒュッと縦へ持ち出して置き去りにした。タイミングで抜いている感じだ。

 50歳まで現役だった選手なので、いつが全盛期なのかよくわからないのだが、映像をチェックできたのは38歳の頃。若い頃はもっと速かったのかもしれない。

 よく似ていたのが1950~60年代に活躍した、ブラジルのガリンシャだ。やっぱり小刻みなステップで間合いを計りながら、縦へビューンと出る。

 ただ、ガリンシャの飛び出しは、まさにロケットスタートだ。比較した年齢が違うのでマシューズには分が悪いのかもしれないが、スピード自体は比較にならない。もう、あの速さがあればフェイントは要らないんじゃないかというぐらいなのだ。

 実際、ガリンシャは多彩なフェイントを持っていたが、抜くときはほとんどスタートダッシュ一発でぶっちぎっている。現在のクリスティアーノ・ロナウドと同じで、いろいろ技は見せていても、いざ抜くときは圧倒的なスプリント力というタイプだった。

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