PSGに真っ向勝負で4失点。戦略家ビラス・ボアスの旬はもう過ぎた (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 極めつけは、PSGの4点目のシーンだ。自陣でボールを受けたヴェッラッティに対し、アンカーのストロートマンが深い位置まで食いついたことで、その背後に空いた広大なスペースにいたディ・マリアにパスが通った。そのディ・マリアのスルーパスにエムバペが合わせて抜け出し、駄目押しゴールを決めている。

 横綱のPSGに対して、マルセイユのアンドレ・ビラス・ボアス監督はがっぷり四つに組んで真正面から挑み、無残に撃沈する羽目となったわけである。さすがに後半からシステムを4−4−2に変更して修復を図ったが、4点差をつけられたマルセイユにもう反撃のエネルギーは残されていなかった。

 勝ったPSGは、これで2位ナントとの勝ち点差を8ポイントに広げ、独走態勢をより強固なものにした。リヨン、モナコ、リールといったライバルたちが軒並みスタートダッシュに失敗したため、11試合を消化した時点で早くも今季の優勝の行方が見え始めている。

 また、マルセイユとの「ル・クラスィク」の通算成績においても、今回の勝利で31勝19分31敗とイーブンに持ち込むことに成功。フランス国内最大のカードで近年は16戦負けなしという無双状態が続く。

 今季はチーム最大の売りでもある「MCN(エムバペ、カバーニ、ネイマール)トリオ」の結成がまだ一度もお目見えしていないにもかかわらず、これだけ圧倒的な強さを誇るPSG。むしろ全員が万全の状態で揃いそうなシーズンの後半戦が見ものである。

 一方、心配なのが名門マルセイユの今後だ。

 この試合を迎えた段階の順位は、首位PSGと8ポイント差の4位に位置していたが、敗戦後は7位に下降。逆に17位のトゥールーズとの差がわずか4ポイントに縮まり、2週間後には降格圏に肉薄しそうな可能性さえ否定できない。

 とりわけ気になるのが、この試合でも露呈してしまった指揮官ビラス・ボアスの稚拙な采配である。

 たいていのクラブは、横綱PSGに対して普段と異なる戦術で臨み、なんとか相手を苦しめようとする。もちろん、それによって勝ち点を得られるとは限らないが、前任者ルディ・ガルシア監督(現リヨン監督)もそうやって戦力差を埋めようとした。

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