替えのきかない酒井宏樹。不動の右SBが守備に安定をもたらす (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 ただ、酒井が不動の地位を築いているその一方で、新体制でスタートしたチームの陣容は少し気がかりだ。クラブが目標とするチャンピオンズリーグ(CL)はおろか、昨季はヨーロッパリーグ(EL)出場権を失ったにもかかわらず、今夏の補強はあまりにも寂しいものだった。

 たとえば、移籍金を支払って獲得した新戦力は、アルゼンチンのボカ・ジュニアーズから加入したストライカーのダリオ・ベネベットと、ナントから獲得したMFヴァランタン・ロンジエだけ。手薄なCBにはアルバロ・ゴンサレス(前ビジャレアル)を補強しているものの、この取引は1年間のレンタル契約だ。

 現オーナーのフランク・マッコートがクラブを買収した3年前は違った。

 積極的な投資を行ない、シーズン途中でガルシア監督を招聘したほか、冬の移籍期間にディミトリ・パイエ、モルガン・サンソン、パトリス・エヴラ(今夏引退)といった即戦力を次々と補強して、EL出場権を獲得。翌2017-18シーズンのELでは準優勝を果たすなど、クラブは上昇気流に乗っているかに見えた。

 ところが、ケビン・ストロートマンを筆頭に昨夏の投資がことごとく空振りに終わったことで暗転すると、ELはグループステージで敗退し、リーグ・アンでも5位に食い込むのが精一杯。気づけば、クラブの財布も空っぽになっていたというわけだ。

 とはいえ、今季の陣容でELやCLを狙えないわけではない。

 新加入したストライカーのベネベットは早くも4ゴールをマークし、初めてヨーロッパでプレーするとは思えない適応ぶりを示せば、CBアルバロ・ゴンサレスも若いブバカル・カマラと息の合ったプレーを見せるなど、新戦力はそれなりに当たっている。

 貴重な得点源のフロリアン・トヴァンが手術を行なったため、しばらく戦列を離れることは不安材料ではある。だが、昨季不調に終わった大黒柱パイエと、巻き返しを誓うストロートマンの完全復活さえあれば、上位に食い込む可能性はある。

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