2019.09.03

バルサとブラジル人スターとの愛憎の歴史。
ネイマールに固執した理由

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

「Nデー」

 それは空騒ぎに終わり、訪れることのない1日だった。

 パリ・サンジェルマン(PSG)のブラジル代表FWネイマールが、バルセロナに移籍する日を巡り、報道は加熱していた。「ウスマン・デンベレ+ネルソン・セメド+1億ユーロ(約120億円)」「イヴァン・ラキティッチ+1億5000万ユーロ(約180億円)」「今シーズンはレンタルで、買い取りオプション付き」などなど、さまざまな条件が洩れてきた。しかし結局、交渉は決裂。PSGはトレードではなく、2億5000万ユーロ(約300億円)のキャッシュを要求していたという。

「集中力を失った」

 ネイマール騒動のせいか、バルサは開幕から3試合で1勝1分1敗と、スタートダッシュに失敗した。チーム編成が決まらない。その不安定な状況が、選手たちのメンタルを蝕んだのは明らかだ。バルサはどうしてブラジル人スターに固執したのか――。

リオネル・メッシの欠場もあり、開幕から低調な戦いを続けているバルセロナ「バルサの戦術に適応するのは難しい」

 それは通説で、優れた選手でも苦しんでいる。たとえばポルトガル代表MFアンドレ・ゴメス(現エバートン)などは、精神的に参ってしまうほどだった。バルサは下部組織から一貫したスタイルがベースにあり、プレーのオートマチズムに組み込まれながら個性を発揮する必要があるだけに、勝手が違うのだ。

 しかし、活躍したブラジル人たちは苦にしていない。むしろ、個性を発揮した。ロマーリオ、ロナウド、リバウド、ロナウジーニョ、ダニエウ・アウベス、そしてネイマール。彼らは華やかなプレーでチームに勝利をもたらす英雄だった。

 ヨハン・クライフ監督は、ロマーリオという最後のピースを得て、「ドリームチーム」の伝説を完成させた。ボビー・ロブソン監督は「ロナウドこそ戦術だ」と言い切った。ルイス・ファン・ハール監督はリバウドと衝突しながら、リーグ連覇など最盛期を過ごした。フランク・ライカールト監督はロナウジーニョの加入で、栄光の時代を作った。ジョゼップ・グアルディオラ監督はダニ・アウベスがいたからこそ、超攻撃的なサッカーを実現させた。そしてルイス・エンリケ監督はネイマールの力を引き出し、「MSN」(メッシ、スアレス、ネイマール)を確立した。