ブラジル復活のコパ・アメリカ総括。やっぱり南米は超過酷だった (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 開幕時に頼りなさそうだったブラジルが、「強いセレソン」に変貌したのは、グループステージ3戦目のペルー戦を5-0で快勝したのがきっかけだろう。

 36歳の右サイドバック、ダニエウ・アウベス(パリ・サンジェルマン)がダブルワンツーで抜け出して4点目を決めたプレーは、チーム全体を勢いづけた。また、チッチ監督がサイドアタッカー陣をふたり入れ替えたことで、その後、ジェズスとエベルトンがレギュラーに定着することになった。

 一方、ブラジルがグループステージのペルー戦でチームの最適解を見つけたのに対し、ペルーにとっても、この0-5の惨敗はチームが変わるきっかけとなったようだ。

 準々決勝のウルグアイ戦では、守備にアクセントを置いた戦術を採用して相手を零封。PKに持ち込み勝利を得た。さらに準決勝のチリ戦では、一転して立ち上がりから奇襲戦を仕掛け、3-0のアップセットを演じてみせた。

 決勝ではブラジルとの実力差が明らかになったものの、一度は1-1に追いつく大健闘。1点を追う後半は、ゲレーロとクリスティアン・クエバ(サントス)が中央突破を図り、ルイス・アドビンクラ(ラージョ・バジェカーノ)のサイドアタックを仕掛けるなど、ブラジルを守勢に追いやる時間帯を作った。

 ブラジルに負けた直後、ペルーの全国紙『ラ・レプブリカ』紙はウェブサイト上にて、ペルー代表に「ありがとう」と、感謝の気持ちを掲載した。

 今思うと、招待チームの日本とカタール、南米勢の下位2カ国(ボリビア、エクアドル)が脱落し、中位・上位8チームに絞られた準々決勝からが「本当のコパ・アメリカ」だったのだろう。この8カ国の実力伯仲ぶりは、ブラジル対パラグアイ、ペルー対ウルグアイ、チリ対コロンビアがすべて0-0に終わり、アルゼンチン対ベネズエラだけが2-0で白黒はっきりしたことで顕著になった。

 2018年ワールドカップは南米勢に4.5枠が与えられ、最終的に5カ国が本大会に出場した。実力の拮抗する南米予選は、世界一過酷と言っても過言ではないだろう。ブラジルは過去のワールドカップすべてに出場しているが、コパ・アメリカを現地で取材していると、それはものすごい偉業だなと痛感する。

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