ブラジルを熱狂させたアルゼンチン戦。勝因は効率性とダニ・アウベス (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 試合終盤にパウロ・ディバラが入ると、メッシはよりよくなり、アグエロはより危険になった。アルゼンチンは賞賛に値するプレーをした。しかし彼らの前にいたのは真剣で、そして狡猾なブラジルだった。ブラジルを勝利させたのは、何が何でも勝ちたいという強い、強い気持ちだった。

 試合後、メッシはこう言っていた。

「ブラジルはラッキーだったこともあるが、なによりもサッカーというものをよくわかっていた。彼らは我々のミスを大いに利用した。サッカーとはこういうものだ。より優れたチームが勝つのではなく、より効果的にプレーしたチームが勝つ」

 一方、セレソン(ブラジル代表)のキャプテン、ダニエウ・アウベスはこう言った。

「今日はブラジルの日だった。アルゼンチンは今大会一番のプレーをしたが、たとえ180分プレーをしても、我々が勝っていただろう」

 ダニ・アウベス――彼の存在もブラジルの勝因のひとつだろう。現在36歳、この日、ピッチにいた選手の中では最高齢で、おまけに所属するチームもない。パリ・サンジェルマンを離れたものの、移籍先がまだ決まっていないのだ。

 ダニ・アウベスは、まるでタキシードを着てプレーしているかのようにエレガントに見えた。ブラジルの1ゴール目は彼が生み出したものといっていい。前半19分。まずはアルゼンチンボールを奪い、敵を抜き、その後、頭を動かして左に行くと見せかけ右のロベルト・フィルミーノにボールを出す。これがガブリエル・ジェズスのゴールにつながった。6万5000人の大観衆はゆうに4分間はダニ・アウベスに拍手を送った。誰がゴールしたかより、誰がこのゴールを実現させたかが重要であると、人々は知っていたのだ。

 ダニエウ・アウベスは、この日のマン・オブ・ザ・マッチだった。彼の前にキャプテンを務めていたネイマールのことなど、もうみんな忘れていた。セレソンの選手たちは彼のことを、敬意をこめて"プレジデント"と呼ぶ。

 試合後、チッチ監督はあまり多くを語らなかった。しかし、あるフレーズが私の注意を引いた。

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