欧州サッカー番長3名が「CL覇者リバプールの進化」を分析した (4ページ目)

  • photo by Nakashima Daisuke

中山 小澤さんがおっしゃったように、普段のリバプールはもっとパスをつなぐサッカーをしていたと思います。ただ、昨シーズンから変わったと感じるのは、守備が行きすぎないようになったことでしょうか。

 たとえばドルトムント時代のクロップは、「ゲーゲン・プレッシング」と言われたように、前から激しく守備をしていましたが、それだとプレミアリーグでは外されたときに一気にピンチを招いてしまいます。しかも「ボックス・トゥ・ボックス」の戦いに慣れているチームが多いので、ブンデスリーガ時代のような効き目はありません。そこの調整をうまく行なって、行きすぎない守備ができるようになった印象があります。

 もちろん、今回の決勝戦でも前の3人が相手のキーパーと最終ラインに、ロバートソンとワイナルドゥムもダブルボランチに連動してプレスをかけに行っているわけですが、行きすぎて外され、ピンチを招くことはありませんでした。ボールを奪いにかかるというよりも、プレスする方向によって相手のパスコースを限定するプレッシングと言ったほうがいいかもしれません。それができるようになったことが、失点が減った要因になっているのではないでしょうか。

倉敷 そうですね。ユルゲン・クロップのサッカーは魅力的だけど、当たり外れがあるというか、大事な試合で大負けしてしまうこともこれまでにはありました。では、攻撃面での変化はありますか?

中山 仕留め方のバリエーションが増えた印象があります。昨シーズンはサラー頼みという印象がありましたが、今シーズンは、セットプレーもうまく使えるようになっていますし、破壊力は低下したかもしれませんが、全体的に「やんちゃなサッカー」から「大人のサッカー」になった感じがします。

倉敷 小澤さんは、ユルゲン・クロップの変化、あるいは進化ということについては何かお感じになることはありますか?

小澤 トレンドの話にも合致しますが、ここ1、2年は前線を同数にして激しいハイプレスをするチームがヨーロッパのトップレベルで増えましたが、そんななかで、とくにGKを使ってプレスを外し、GKからのロングボール一発でカウンターを狙うチームも増えてきました。なので、プレスを外されないようにうまくコントロールするとか、前線のプレッシングが行きすぎないようにするというところは、クロップはこの試合でも随所に見せていたと思います。

 早い時間に先制したこともあるかとは思いますが、その後の時間帯のリバプールを見てみると、スパーズがGKウーゴ・ロリスにボールを入れた時はプレスに行っていましたが、ロリスを使わないないビルドアップに対しては、セットして守っていました。行くときと行かないときの判断基準がしっかりと植え付けられていますし、うまくコントロールできていた印象があります。

 とくに最近はバルサのマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンやマンチェスター・シティのエデルソンのようなタイプのキーパーが出てきて、キーパーからのロングカウンターがかなり脅威になってきていますが、この試合のリバプールはそれをやらせないという守り方を見事にやっていたと思います。

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