欧州サッカー番長3名が「CL覇者リバプールの進化」を分析した (2ページ目)

  • photo by Nakashima Daisuke

倉敷 本当ですね。先制ゴールが決まったのが前半2分。先制点は、試合展開に大きな影響を与えました。リバプールには攻撃的なイメージがありますが、舞台はCL決勝ですし、守れないチームではないわけですからリバプールにとっては大きなアドバンテージになったことは間違いありません。ジョルジニオ・ワイナルドゥムのこの試合におけるタスクも変わったのではないでしょうか。

小澤 そうですね。リバプールは幸先よく先制点を奪ったことによってリスクをかけて前掛かりなサッカーをする必要はなくなりましたし、スパーズがGKにボールを下げる時には高い位置までプレッシングで深追いしていましたが、基本的にはしっかり守備ブロックをセットして、慎重な試合運びをするようになりました。

倉敷 スパーズは最後までペナルティエリア付近まで入っていけなかったですね。試合終盤にゴールをこじ開けられそうなシーンはいくつかありましたけれども、それでもアタッキングサード目掛けて加速する攻撃はさせてもらえなくて、ミドルレンジのシュートが目立ちました。マウリシオ・ポチェッティーノ監督もルーカス・モウラ、エリック・ダイアー、フェルナンド・ジョレンテと次々とカードを切って打開しようとしましたが及ばなかった。そんななかで、87分にディヴォック・オリギがゴールを右隅に決めて完全に勝負が決まってしまったわけです。

中山 試合開始と試合終了間際の得点だったので、その間の攻防に物足りなさを感じたファイナルでした。いずれにしても、倉敷さんがおっしゃるとおり、開始20秒のハンドが明暗を分けたことは間違いないでしょう。この試合のリバプールはパスをつないで攻めることをしないで、かなりロングボールを多用していました。パス本数も280本で、これはスパーズの528本の約半分ですし、明らかにいつもと違う戦い方をしていた印象です。

 速い時間帯で先制したことによってユルゲン・クロップ監督が、割り切った戦い方を選択した可能性はあります。しかもこの試合のクロップは、やけに冷静に見えました。いつもはゴールが決まったらもっと派手に喜ぶのですが、この試合はそうではなかった。そこも、今回のファイナルで印象的だった点です。

倉敷 クロップはゲン担ぎをする人なので、それもゲン担ぎだったのかもしれませんね。

 両チームとも逆転勝利で決勝に駒を進めたわけですが、データを見れば欧州五大リーグで優勝を狙えるチームのスタイルはほとんどが先行逃げ切りです。先制した試合は90パーセント近い勝率を誇りますが、シーズン中の逆転勝利はどこもわずかです。ビッグクラブであってもなかなか逆転のためのプランは成功していないということです。

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