圧巻のハット。「千両役者」ロナウドは一点の曇りなき欧州王座を狙う (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • ムツ・カワモリ●撮影 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 その後ろのナンバー10の位置には、マンチェスター・シティでプレミアリーグを連覇したばかりのベルナルド・シウバを置き、アンカーにウォルバーハンプトンのルベン・ネベスを配するダイヤモンド型の4-4-2を採用。最終ラインを統率したのは36歳の大ベテラン、ぺぺだ。

 対するスイスは、スタートはフラットな4-4-1-1ながら、ヤングボーイズでメキメキと頭角を表すドレッドロックの右SBケビン・ムバブが頻繁に高い位置を取り、得意の突破とクロスで攻撃の端緒を開いた。1トップにはポルトガルのベンフィカで活躍するハリス・セフェロビッチ、その後ろで自由に攻撃を司ったのがリバプールの一員としてチャンピオンズリーグを制したばかりのジェルダン・シャキリだった。

 試合開始からどちらも激しいバトルを繰り広げ、ポルトガルのブルーノ・フェルナンデスがスイスのスティーブン・ツバーを削ったかと思えば、突破を試みるロナウドをムバブが後ろから倒して、ポルトガルに好位置でFKが与えられる。するとロナウドは壁の右上を越えて落ちる強烈なキックで、ポルトガルに先制点をもたらした。

 一方のスイスも後半にボールが止まった状況から同点に追いついたが、成り行きは「変な60秒」(ペトコビッチ監督)だった。52分に後方からのフィードを追ったスイスのツバーとポルトガルのネウソン・セメドがもつれて倒れるも笛は鳴らず、試合は続行。するとそこから逆襲が始まり、今度はベルナルド・シウバがスイスのボックス内で倒されてPKが与えられる。スイスが憤然と抗議すると、主審はVARでリプレーを確認し、判定は覆ってスイスにPKが与えられた。これをスイスのレフトバックのPK職人、リカルド・ロドリゲスが沈めてゲームは同点に。

 そこから試合は拮抗していき、中盤のつぶし合いに時間が割かれていく。グラニト・ジャカがベルナルド・シウバを激しくチャージし、シャキリがゴンサロ・グエデス(ほぼ何もできずほろ苦い代表デビューとなったフェリックスと交代で出場)を倒して、どちらもイエローカードを提示される。かたや、警告を一度も受けなかったポルトガルでは、ネベスのシンプルかつ巧みなゲームメイクが光り、左MFのウィリアム・カルバーリョは激しくもフェアなボール奪取でピンチの芽を摘み取っていく。

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