2019.06.07

圧巻のハット。「千両役者」ロナウドは
一点の曇りなき欧州王座を狙う

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • ムツ・カワモリ●撮影 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「(ネーションズリーグについて)多くの人やクラブが懐疑的に見て、反感さえ持っているようだ。興味がないという人もいる。しかし実際には多くのチームが相手をしのごうとし、下部のチームは懸命に昇格を目指した。たしかに、当初は複雑なシステムだと思っていたけれど、徐々に明確になっていった。とても有意義な大会だよ」

 ネーションズリーグ決勝トーナメントの前日会見で、スイスのヴラディミル・ペトコビッチ監督はそう言った。今シーズンから始まったUEFAネーションズリーグは代表チームのリーグ戦で、トップディビジョンを勝ち上がった4チームが、頂点を目指してトーナメントを戦う。

ポルトガル代表で7度目のハットトリックを達成したロナウド リバプールのユルゲン・クロップ監督は「世界でもっとも意味のない大会」とこき下ろした。ドイツはリーグA(トップディビジョン)のグループ1で最下位になり降格してしまったが、大会の価値が見出せなかった分、ショックも少ないなどと言うファンもいる。

 クラブの指揮官からすれば、代表で真剣勝負がさらに増えることを危惧する気持ちはわかるし、いちファンはそんなふうに強がって母国の代表の地盤沈下に目を背けたくなっているのかもしれない。ただしニュートラルな視点に立てば、選手たちが流してプレーしているようなフレンドリーマッチよりも、何かをかけて戦っている姿を観るほうが断然いい。

 そして、ポルトのドラゴン・スタジアムのピッチ上には、期待を大きく上回るハイテンションな攻防が繰り広げられた。

 決勝トーナメント開催国ポルトガルの代表は、EURO2016の覇者だが、この時はグループリーグで3分けし、決勝トーナメントも4試合中3試合で延長戦を戦って制したぎりぎりの優勝だった。つまりこの大会を制すことになれば、一点の曇りもない欧州王者の称号を手にすることになる。「選手たちのモチベーションはスーパーだ」と前日に話したフェルナンド・サントス監督は、前線にクリスティアーノ・ロナウドとジョアン・フェリックスを並べた。34歳の前者はグループステージを回避、19歳の後者はこれが代表デビュー。つまり二人とも、これが初めてのネーションズリーグの舞台だった。