長谷部誠に聞く仕事の流儀。「日本の過労の問題はしっかり考えないと」 (3ページ目)

  • 鈴木達朗●取材・文 text by Suzuki Tatsuro
  • photo by Getty Images

――なるほど。このインタビューに先立って、長谷部選手のチームメイトであるベテランのマルコ・ルス選手にも話を伺ったんですが、今は育成年代でも効率化が進んですべてが整えられすぎていて、プロとして契約を結ぶ重大さを理解していない選手もいる、と口にしていました。先ほどの長谷部選手の話とリンクする部分があると思うのですが、若い選手に対して同じように感じることはありますか?

「ジェネレーションギャップみたいなものは感じますよ(笑)。ルスもそうだと思うんですけど、僕らベテランから見ると、今の若い選手たちの考え方や取り組み方は、やはり僕らの時代とは違う。だけど、僕がそれを否定することは、あまりないですね。『もうちょっとこうしたほうがいいと思うよ』とか、『自分で考えてみて』といったようにアドバイスをすることはありますけど。

 とにかく、そういう若い選手たちには、すぐに答えを伝えるのではなくヒントを与えて、"自分で考えさせる"ことが大事だと思います。そのあとは、口で言うよりも"背中で見せる"こと。僕たち(ベテランの選手)が、どういうことをしてきたからプロで長くサッカーを続けられているのか、トップレベルでやれているのかを見せないといけない。時代の流れを感じる部分ではありますが、それは若い世代の責任というよりは、彼らの周りでそういう環境を作っている大人の責任でもあると思うので」

――大人の責任という点は、ルス選手も指摘していました。14歳、15歳くらいの選手に代理人がついて、甘い言葉ばかりを吹き込まれてしまうと若い選手たちがおかしなことになってしまうと。

「そうですね。今は"青田買い"じゃないですけど、代理人やクラブが若い優秀な選手をどんどん囲い込んでしまうことがある。なかには、若いうちに選手をたくさん確保し、『そのうちの何人かが当たればいい』という感覚でいる人もいるでしょうね。それをしっかりとプロテクトする制度は必要だと思うし、すでに解決策の議論も進んでいるとは思います。サッカー界が進歩していくのに合わせて、そういう対応力がより必要になると思います」

(後編に続く)

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