監督も惚れている堂安律の才能。浮き球スルーパスで久々に輝いた (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 ただこの間、フローニンゲンは14試合でたった16ゴールしか奪っていない。一方、失点は18チーム中、断トツに少ない9失点。

 冬の移籍市場で経験豊富な選手を補強したことにより、フローニンゲンはゲーム運びがうまくなった。また、MFルドヴィト・ライスが大きな成長を遂げたり(現在18歳のライスにはバルセロナBながら獲得の動きがある)、SBゼーファイクにオランダ代表入りの噂が上ったりと、今年に入ってからポジティブな材料があふれ出ている。

「チームの調子がよすぎて、激しかった練習がさらに激しくなっちゃうんです」と、堂安が教えてくれたことがある。本番さながらの熱い練習は、若い選手たちの成長をさらに促しているだろう。

 しかしながら、センスは練習しても育まれないものだ。

 フローニンゲンを率いるデニー・バイス監督は、他の選手にはない個性を堂安に見出し、ノーゴールやノーアシストが長く続いても我慢強く「Ritsu Doan」の名前をスタメン表に書き記し続けている。それは「お前がやるんだ」という、指揮官から堂安に対するメッセージだ。

 オランダサッカーの根底を支えるものは、若い選手に対する"我慢"だろう。ティーンエージャーのDFが失点に絡むミスをしても、「サッカーにミスはつきもの」と認める文化がある。そして、18歳から21歳ぐらいまでの若い選手たちはどんどん試合数を積み重ね、その道程で責任感が芽生えていく。

 堂安も、それは同じだろう。プレミアリーグで活躍しているソン・フンミン(トッテナム・ホットスパー)のように、試合終盤になってもロングドリブルで相手を抜いてシュートを決めるプレーをイメージしつつ、日々トレーニングに励んでいる。

 今後さらに飛躍するためには、右足でのプレーの改善も急務だ。対戦相手の多くが堂安のプレーを対策して臨んでいる今、左足一本ではプレーの幅が足りない。アヤックスを代表するレフティ、MFハキム・ツィエクやFWドゥシャン・タディッチは、時折使う右足でゴールやアシストを決めてしまう。

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