革命進行中のバルサの社会貢献。難病の少年をVRでカンプ・ノウへ招待 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 計画中のエスパイ・バルサでは、ファンは一日中のんびりできる。試合がない日でも大丈夫だ。アメリカンフットボールのファンのなかには、試合の前日からスタジアムに車で乗り込み、駐車場でバーベキューパーティーをする人たちがいるが、エスパイ・バルサにも試合前日からやって来るファンが増えそうだ。

 エスパイ・バルサでは、ファンの動きを追跡するセンサーを使って、ファンがどこに行って、どこに行っていないかを追う。こうしてバルサは、ファンのニーズにさらに細かく応えられるようになる(次世代スタジアムのゲートに掲げられる言葉は「ここに入りし者はプライバシーを忘れるべし」になるかもしれない)。

 やがてバルサは(そしてコンセプトづくりからゴミの処理まで、さまざまな部門を担当するビジネスパートナーは)、新スタジアムから得られたノウハウを世界中のプロジェクトに売ることができるだろう。

【社会貢献】

 動画の中では、13歳のやせた少年が病院のベッドに横たわって笑っている。彼の名はポル。カンプ・ノウへ行くことが夢だが、彼にはできない。それでもポルは、ベッドからロボットを操ってカンプ・ノウのピッチを歩かせる。バーチャルな意味で、自分もカンプ・ノウを訪れるのだ。
(動画はこちら https://www.youtube.com/watch?v=mNmmzGque4U )

 バルサの元選手エリック・アビダル(現在はディレクター・オブ・フットボール)が、神聖な芝の上でロボットのスクリーンを通じてポルと話をする。動画の最後に、アビダル(彼自身も肝臓がんと戦っていた)が病室を訪れ、ポルとハグをする。

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