バルサ監督が語るデータ活用術。「メッシに伝えること、任せること」 (5ページ目)
データ分析担当者は、少なくとも、どのマッチデータは重視しなくていいかがわかってきている。90年代から一般的になった最初のデータは、測定が実に簡単なものだった。パスの本数、タックルの回数、シュート本数といったものだ。
こうした「イベント・データ」(選手がボールに対して何をしたかを示すもの)は、今でもテレビ中継などではよく使われる。しかし選手がボールに触れる時間は、1試合に平均2分ほどしかない。
フットボールでもっとも重要なのは、残りの88分に選手がどこにいるかということかもしれない。重要なスペースをケアしているか、チームメイトのためにスペースをつくっているか──といったことだ。フットボールではたいていのことがそうだが、こうしたデータも解釈の対象にはなる。しかし最近、もっと使い道のありそうな新しい種類のデータが登場した。「追跡(トラッキング)データ」だ。
バルサは10年近く前に、トレーニングや試合での選手の動きを追跡するためにGPSを使いはじめた。「あれは革命的だった」と、バルサの会長ジョセップ・マリア・バルトメウは言う。
いまバルサは「Wimu」という新しいシステムを使っている。スペインの新興企業リアルトラック・システムズとともに開発したものだ。「Wimu」はウエアラブルなセンサーを選手に着けさせ、ポジションやスピード、加速度、心拍数などを記録する。
フットボールにおける攻撃とは、優位な局面をつくり出すことだ。これには数的な優位(自チーム2人対相手チーム1人のような局面)やポジションに関する優位(自チームの選手がスペースを支配している局面)、あるいは質的な優位(たとえばメッシがたいしたことのないDFを相手にドリブルを仕掛けるとき)などがある。バルサは追跡データを活用して優位な状況をつくる方法を見つけたいと考えている。
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